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LINE公式アカウントの分析業務を担当するチームを紹介します

LINEの開発組織のそれぞれの部門やプロジェクトについて、その役割や体制、技術スタック、今後の課題やロードマップなどを具体的に紹介していく「Team & Project」シリーズ。今回は、LINE公式アカウントの分析業務を担当しているData Science室のOA Data Scienceチームを紹介します。

マネージャーの西手嘉昭、永峰宏規に話を聞きました。

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OA Data Scienceチームのデータサイエンティストの皆さん

まず、自己紹介をお願いします。

西手:2017年4月に、OA Data Scienceチームにデータサイエンティストとして入社しました。今はマネージャとしてのチーム管理業務と、LINE公式アカウントの企画・事業サイドとの案件推進がメインの業務です。前職は、大卒でSIerに新卒入社して基幹業務パッケージ導入やマーケティングオートメーション導入などのプロジェクトに参画していました。

永峰:2020年2月に、OA Data ScienceチームのLINE公式アカウントの分析担当として入社しました。現在はMachine Learning室のMachine Learning Solution2チームも兼務しており、LINE公式アカウントのプラットフォームに対する機械学習の適用と関連する分析業務を中心に行っています。大学院を卒業後は金融系シンクタンクに所属し、2年弱ほど証券分析及び自然言語処理を用いた投資手法に関する調査・研究を行った後に、現職に移りました。

(左から右)マネージャーの西手さん、永峰さん

LINEへの入社を決めたきっかけ、理由を教えてください。

西手:SIerやコンサルティングファームなど自社でデータを持たない会社は、データを調達する時点で非常に時間がかかり、分析結果をサービスや施策に活かすスピード感が遅いのが課題だと感じていました。そこで、自社内にデータを豊富に保持していて、会社としてデータ分析や活用に経営層がコミットしている会社を探していて、LINEが候補になりました。特に決め手となったのは、実際に面接を通して「ここなら自分の想像以上にやりたいことができそう」と思えたことです。

永峰:入社を決めた理由は二点あります。

一点目は、国内でも有数の規模のサービスを展開しており、取り扱うデータのサイズも種類も他社では経験できないものとなることが期待できたことです。特にデータサイエンティストとして入社する以上、一定以上のデータが存在しなければそもそも仕事がその入手や整備から始まるため、この点は大事でした。

二点目は、データサイエンティストとして実際のプロダクトへの貢献に主眼を置いて取り組めると感じたことです。特にデータ活用が未成熟な組織では、データの収集やPoC(Proof of Concept)で終わり、プロダクトへの貢献に至るまでの距離が遠すぎることもあります。LINEでは、少なくとも僕の入社時においては、既にプロダクトへのデータ利用・データサイエンティストによる事業貢献の実績が既にあり、この点への期待はありました。

今の仕事のやりがいを教えてください。

西手:会社のカルチャーとして多様かつフラットなので、スピードが速い反面、組織として未整備の課題や検討事項が多いです。

例えば、機械学習エンジニアやデータサイエンティストは目的に応じて機械学習用・分析用などのデータマートを生成していますが、その一部は企画/事業チーム・LINEのファミリーサービス向けに公開することがあります。データを必要な範囲に公開することにより、機械学習エンジニアやデータサイエンティスト以外の職種でも企画立案や事業モニタリングにデータを活用することができるため、意思決定の精度やスピードが向上するメリットがあります。しかし、データの公開によって、データのメンテナンスや部署に応じた細かな閲覧権限の設定といった運用コストも同時に発生するため、ここを疎かにするとせっかく公開したデータが活用されないという課題が発生することになります。

こういった課題の解決は世間的にはデータサイエンティストの仕事の本分ではないと捉えられているかもしれませんが、LINEのデータサイエンスチームでは「データ分析によってサービスの競争力を最大化する」というミッションだけでなく、「適切な権限管理をした上で全社員のデータ活用レベルを向上させる」こともミッションになっているため、マネージャとしてそのような課題を解決していくことが役割として求められておりますし、同時に仕事のやりがいでもあります。

永峰:入社前の期待通り、国内でも類を見ない規模のデータを取り扱うことが出来ています。データサイエンティストとして働く上で、非常にやりがいを感じる点です。実際にプロダクトにより身近な立場で、データを取り扱う仕事を行うことができていると感じます。自分が行った分析や作成したロジックが、実際にプロダクトへの意思決定や一機能として反映されることは魅力的です。

また、具体的に解決しなければいけない課題を感じた際には、自ら提案・準備して進めることができる自由度もあります。

チームの構成・役割などについて教えてください。

西手:Data Science4チーム7名のうち、LINE公式アカウントの分析担当は4名で、データサイエンスに基づく意思決定支援を行っています。ただ言われたままにデータを出したり、分析レポートをまとめるのではなく、これまで見えていなかった課題を抽出したり、プロダクトとしてのあるべき状態を提示したりすることを意識しています。言われたことだけを実行するなら、業務上のやりとりは少なくてすむことが多いのですが、こちらが提示した内容を推進するにあたっては、我々だけでは推進が難しいことも多くあります。そのため、機械学習開発を行うMachine Learningチームや、データ基盤開発を行うData Enigneeringセンター、また他の事業部との連携を取ることも必要となります。

チームメンバーを紹介してください。

西手:永峰さんは真面目な性格で、データサイエンスだけでなく機械学習もできるすごい人です。LINE公式アカウントのメッセージ配信の最適化・友だち追加の最適化など、難易度の高い案件をお任せしています。元々は金融系のリサーチャーでKaggle Expertというバックグラウンドがあり、左脳がとても強いです。続いて清水さんは、主にアカウント事業部向けのデータサイエンス案件のプロジェクトマネジメントを推進していただいています。コミュニケーション力が非常に高く、データプロジェクトマネージャーとして活躍中です。前職は大手の事業会社で数多くのデータ分析・活用に関する開発案件をリードされていました。最後に2021年の新卒入社の松田さんは、決定木分析に関する研究をしていた方で、いつも楽しそうに仕事されています。入社して間もないですがキャッチアップも速く、若さを感じますね!

(上段)永峰さん(下段左から右)松田さん、清水さん

利用技術・開発環境について教えてください。

西手:オンプレのHadoop環境で主に以下のツール群を利用して分析しています。大規模なサービスの分析もストレスなく実行できる分析環境があります。

現在チームとして取り組んでいる課題と、その解決に向けた取り組みを教えてください。

永峰:LINE公式アカウントのプラットフォームとしての価値向上のため、メッセージ配信の最適化と、友だち追加数・継続率の最適化という2つのトピックに、現在はチャレンジしています。

まず、メッセージ配信の最適化についてです。我々が分析を担当しているLINE公式アカウントでは、LINEのプラットフォーム内で一般ユーザーと企業アカウントを結び、メッセージをやりとりする機会を提供しています。そんな中、自社サービスのアカウントがメッセージを送りすぎることによって、周辺のLINE公式アカウントのメッセージが埋もれてしまうという問題が発生していました。この課題は、単純に自社サービスのアカウントのメッセージ送信数を規制するだけでは、自社サービスの売上低下へ繋がる可能性がありました。よって我々のチームでは、この問題をデータサイエンスを用いて解決することを目指しています。この解決においては、機械学習モデルの開発と、実際の配信システムへの組み込みを、主要なアプローチとしています。

OA Score Targeting という機械学習モデルの概要

西手:当初このアプローチにより、ユーザーがLINE公式アカウントのメッセージを開封する確率を算出し、確率の低い人にはメッセージが届きにくくなるような仕組みを構築するところまで進めることができました。この取り組みについては、LINE DEVELOPER DAY 2020にて私が発表させていただきました。詳細はそちらをご覧ください。

ただし、この仕組みを社内に導入したところ、一部のファミリーサービスに関して、LINE公式アカウント経由のコンバージョンが短期的に下がってしまうことを懸念し、この仕組みをうまく使ってもらえなかった事案が発生してしまいました。そのため現在は、開封確率だけでなくクリック確率も予測して、なるべくメッセージ経由のコンバージョンを落とさず、ブロック率も最小化できるようなターゲティング機能を開発しています。

永峰:続いて、友だち追加数・継続率の最適化についてです。LINE公式アカウントでは、一般ユーザーがより多くの企業アカウントと「友だち」となり、有用な情報やお得なクーポンなどを企業アカウントから受け取ることができるような世界観を目指しています。そのための重要な指標として友だち追加数があるのですが、LINEスタンプやポイント還元などの報酬を目的とした導線ではユーザーがすぐにブロックしてしまい、企業アカウントの価値を体感して頂く機会が失われてしまっているという課題があります。これを実際のデータを用いて様々なシミュレーションを行うことにより向上させていくことも、チームの目標としています。

具体的には、Machine Learningチームが構築した機械学習モデルを、データサイエンスの観点で効果検証することで、CTRだけでなく友だち追加率やブロック率を最適化するための分析を実施しています。また、企業アカウントと友だちになっていないようなユーザーに対して、より適切なアカウントとの接触機会をどのように提供すれば最適な効果が得られるかの分析や提案も行っています。

今後のロードマップを教えてください。

西手:当チームは歴史的な経緯もあり、機械学習モデルの開発やデータマネジメントに関する業務など、データサイエンス以外のタスクにも幅広く対応してきました。今後はメンバーの採用や他チームとの連携を通して、チームメンバーがよりデータサイエンスに関連する業務に集中できるように組織体制を整理していくのが、当面の私のミッションです。

チームメンバーには、LINE公式アカウントの価値の根幹である「ユーザーと企業アカウントのマッチング」および「メッセージ配信の最適化」の2大テーマに取り組んでもらう予定です。具体的な案件としては、これまで10年ほど進化してこなかったスポンサードスタンプの仕様改善、ブロック率低減のためのステップ配信機能の改善、開封・クリック予測モデルを活用したターゲティング機能改善などを来期までには完了させたいですね。

最後に、OA Data Scienceチームに興味を持ってくれた人にメッセージをお願いします。

西手:データ分析をビジネスに活かすにはデータや技術だけでは難しい、と痛感している人ほど、当チームでは活躍できると思います。弊社のデータ分析環境は非常にレベルの高い状態で整備されているため、データサイエンスをいかにビジネスに適用するかが腕の見せ所となります。事業会社でデータ分析をされている方や、コンサルティング業界でご活躍されている方など、ご興味のある方はぜひエントリーをお願いいたします。

永峰:技術に対して高い関心を抱くだけでなく、実問題の解決手法の提案と実際のプロダクトへの実装に強い関心を抱く方がチームに参加していただけると、ありがたいと考えています。よく言われる話ではありますが、得てしてデータサイエンティストとして働く際には、技術のみで解決出来ることは少なく、このチームで働く上でも関係各所への説明・交渉というものは不可欠です。その分、実際にプロダクトに自らのアウトプットが反映される機会もあり、それを楽しめるような方にエントリーして頂ければと思います。

OA Data Scienceチームではメンバーを募集しています。