約100人でのZoom新入社員研修で得られたリモート研修・ワークショップの知見を共有します!

背景

こんにちは。LINE Effective Team and Delivery室 Delivery Managementチームの Tanigawa です。
私のチームは、全社横断的に開発組織のプロジェクトマネジメントやプロセス改善などの支援をする部隊です。(私自身の活動は参考までに:EOF2019登壇

この春、新入社員向けの研修カリキュラムのひとつとして、プロダクト開発の進め方についてのテーマを担当することになりました。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大防止のためオンラインで実施することになりました。
約100人規模でのオンライン研修の運営はチームとして初めての経験だったので、この記事ではそこで得られた学びや気づきを共有します。
この記事を読んだ方が大人数でオンラインワークショップや研修をやる際に、共有する内容が少しでも役に立てばと思います。

前提条件

参加者:約100人
運営メンバー:5人
利用ツール:Zoom, Slack, Miro

  • 参加者となる新入社員は、お互いオフラインで顔を合わせたことがない
  • 本研修の前にすでに Zoom や Slack を使い、その操作に慣れている状況
  • 研修のテーマは「プロダクト開発における “頻繁なフィードバック” の重要性」と「ふりかえりの仕方」の計2回

実際に役に立ちそうな知見

オンライン研修を行う際にやった方が良さそうなことを事前準備編と研修中編とに分けて紹介します。
研修が終わってみると、事前の準備がかなり大切だったと痛感しましたが、実際には研修の進行中でも運営メンバー同士でチャットコミュニケーションを取り、その場で改善していったこともあります。

事前準備編

運営メンバーは複数人とし、さらに役割を分ける

オフラインでの研修でも何人かのスタッフで役割を分けると思いますが、オンラインの場合は、メインスピーカーが把握できる情報が限定されるので、役割分担は特に重要になります。
実際に経験してみると、メインスピーカーになるべく負担がかからないように、できるだけ仕事を分けておいた方が良いと感じました。参考までに私たちが分担した役割を紹介します。

  • ファシリテーション(冒頭で雰囲気づくりをしたり、研修テーマとその背景などを説明する)
  • 研修のコンテンツを話す(メインスピーカーとして)
  • スライド画面の共有
  • Zoom meeting room のホストとして参加者を管理(入室許可、ブレイクアウトルームの操作 など)
  • Zoom チャット、Slack チャットで参加者とのコミュニケーション(質疑応答やトラブルサポート)

運営メンバーは良好な通信環境とマルチディスプレイを準備する

参加者を見ていると、研修中にも何人かネットワーク回線が細くて落ちてしまう人がいました。
Zoomホストや運営メンバーが落ちてしまうと話にならないので、高品質なネットワーク環境の準備は必須です。
さらに、ホスト・ファシリテーター・スピーカーの役割を担う人で、参加者の様子を見ながら進行したい場合は複数のディスプレイを用意しましょう。

Zoom で参加者全員の顔を同時に見るためには、ビデオレイアウトの “ギャラリービュー” を使う必要があります。
しかし、10人以上の規模で、かつZoomで画面共有をする/されている状況では、ひとつのディスプレイの中に共有画面と参加者ギャラリービューを同時に配置するのが難しいので追加のディスプレイを用意しましょう。
逆に言うと、参加者の反応を見ると緊張したり進行がしずらくなったりするような人は、あえて参加者の顔を見ないようにするというオンラインならではの利点もあります。
この場合はひとつのディスプレイで十分ですね。

約100人規模でのオンライン研修の様子

Zoom の事前準備

待機室の設定

ホストが参加者の入室を許可/拒否できる “待機室” という機能があります。
有効にしていれば、参加者は Meeting room URL にアクセスしてもZoomホストが許可しない限り Meeting room に入れないので、意図しない参加者が Meeting room に入ってくることを防止できます。
Zoomホストはイベントの進行中も “参加者” 管理画面で入室の許可/拒否するかの確認をすることになります。
セキュリティの観点では嬉しい機能ですが、Zoomホストは参加者の判別と承認作業で忙しくなってしまいます。

大人数でイベントを行う場合は、参加者の承認作業に専念できるZoomホストの役割の人を準備できるかどうかと、イベントのポリシーと相談して有効にするかを決めてください。

ブレイクアウトルームとルームの事前割り当て設定

1つのメインとなる Meeting room を保ちながら、複数の小部屋(ブレイクアウトルーム)を作って参加者を分けることができます。
ブレイクアウトルームを使うには事前に設定で有効にしておく必要があり、さらなる設定として事前にメンバーを割り当てておくこともできます。
デフォルトの動作では参加者がランダムに分配されます。
参考:https://support.zoom.us/hc/en-us/articles/360032752671

共同ホスト設定

共同ホストは参加者のビデオやマイクの停止/解除の管理などができたり、複数のブレイクアウトルーム間の往来が可能です。
ミーティング中のブレイクアウトルームの操作などメインホストしかできない操作も多くあるようですが、運営メンバー全員を共同ホストにしておくときっと何か良いことがあります。例えば、Zoomホストが落ちると共同ホストのうちの誰かがZoomホストになります。
共同ホストは事前でもミーティング中でも設定できます。

Slack の事前準備

オンラインミーティングをする際には、トラブルに備えて、使用するビデオ会議ツール以外の連絡手段を確保しておくことが重要です。
弊社では Slack を日常的に使っているので、下記の用途で2つのチャンネルを用意しました。

これらのコミュニケーション窓口を用意しておくことで、運営メンバーは研修中でも改善ポイントを共有して改善し、ZoomブレイクアウトルームやMiroのような新しいツールを使っていたとしても、参加者とのコミュニケーションが見える化され、スムーズに研修を進めることができました。

  • 運営メンバー専用チャンネル
    • 運営メンバー間の情報交換
  • 参加者全員と運営メンバーのチャンネル
    • 研修情報の事前伝達
    • 参加者との質疑応答
    • グループワークの内容伝達
    • 各グループのディスカッション結果の投稿
    • アンケートや事後追加情報などの伝達

Miro の事前準備

研修の中でグループに分けてエクササイズをする時間があり、そこに Miro を活用しました。
新しいツールを使ってワークショップなどをする場合は、参加者全員がツールを使えるようになるまでにトラブルなどでもたついてしまう場合があるので、事前の動作確認指示とサポート体制の準備(SlackチャットやZoomチャットで応答できる人)は重要です。
参加者の大半は Miro の操作が初めてだったので、事前にグループごとの仮想ボードとエクササイズで使うテンプレートを用意し、研修の1日前に参加者にログイン確認と簡単な動作確認(名前を書いた付箋を書き残しておく)をやってもらうことにしました。

Power Point スライドショーの画面共有設定を確認する

Power Point のスライドをスライドショーで画面共有する場合は、”スライドショーの設定” で “出席者として閲覧する” を選択しておきましょう。特にシングルディスプレイの場合だと、スライドショーがディスプレイを支配し、他の作業(Slack見たり、参加者の顔見たり)ができなくなってしまいます。地味ですが割と重要です。

研修中編

ルールを設定し、場を温める

研修やワークショップの際に “ハウスルール” や “グラウンドルール” を決めることは、参加者の積極性を促したり学びの価値を高めるために重要なので、オンラインの場合でも設定し説明します。特に今回はオンラインならではのルールを強調しました。

  • PC上のアプリやブラウザのタブは閉じる
  • カメラはONにして、マイクは基本的にミュート(カメラONは新入社員研修全体のポリシー)
  • リアクションは大げさにする
  • 途中いつでもSlackに質問やリクエストしてください

カメラをONにする前提だったので、メインスピーカーにとっては “参加者の状況把握をしやすくするため” に、参加者にとってはグループディスカッションの際に “メンバー同士の安心感を高めるため” に、主に相槌などのオーバーリアクションすることをルールとして伝えました。

そしてそのあと特に重要だと感じたのが、参加者全員でリアクション練習をしたことです。
テレビの収録見学に参加している人がスタッフの指導で拍手とか歓声とかを練習させられるのと同じですね。
カメラに向かって大きく相槌を打ったり、Zoomのリアクション機能を使ってみたりする時間を作ることで、参加者がカメラに向かってリアクションすることの心理的ハードルを下げることができたような気がします。

ブレイクアウトルーム使用時の注意点

ブレイクアウトルームを使ったグループディスカッションは、オフラインで行うものとは違い、各グループからファシリテーターや他のグループの存在が見えなくなるのが特徴です。
これにより参加者は、今まで進行してくれていた人がいなくなって不安になったり、グループの中でだれが話を切り出すのかを探り合ったりしてしまうかもしれません。
メインスピーカーやファシリテーターは、参加者たちの議論は上手く行っているだろうかと心配になるかもしれません。
これらの不安を軽減するためにやっておいた方がいいことを共有します。

ディスカッションテーマが分かるようにしておく

ブレイクアウトルームに分かれると、メインルームで共有されていた画面が見えません。
さらに言うと、研修中でも家の都合(荷物の受け取りなど)で一時離席し、グループディスカッションのテーマを聞きそびれてしまう参加者もいます。研修中に離席する人は実際に結構な数いましたし、人数が多いとファシリテーターやスピーカーは全てをケアできません。
そのような場合でも、参加者が今すべきことを把握できるように、Slackなどの別の連絡手段でディスカッションテーマや指示が見えるようにしておくなどの工夫が必要です。スライドに指示内容を書いている場合は、ブレイクアウトルームに入る前に画面のスクリーンショットを撮っておくように指示してもいいかもしれません。

ホストや共同ホストが支援できる体制を組んでおく

私たちが調査した限りのブレイクアウトルームの仕様をもとに、問題点と工夫の紹介をします。

  • 各ブレイクアウトルームから “ホストを呼ぶ” ことができ、ホストは呼ばれたルームに入るか選択できる
  • ブレイクアウトルームの編集や開始/終了などの操作はホストのみが実行できる(共同ホストはできない)
  • ホストは自分で各ブレイクアウトルームに行き来することができる
  • 共同ホストは一度ブレイクアウトルームに入れば、その後自分で他のルームに行き来することができる
  • ブレイクアウトルーム実施中に Meeting roomから退出し、再入室するとメインルームに戻る

100人で20グループほどの規模のディスカッションでは、Zoomホストがひっきりなしにブレイクアウトルームに呼ばれて質問対応に奔走し、グループによってはホストを捕まえるまで議論を進められない、という悪いケースが想定されます。

一方で、参加者の中には通信環境やその他の理由でディスカッション中に、Meeting room から退出してしまうという事件も起こりうる(実際に何回かありました)ので、ホストは再入室した参加者のブレイクアウトルーム再割り当てのためにメインルームに残っておく必要があります。
この問題に対応するために、ブレイクアウトセッション中は、共同ホスト権限を全運営メンバーに与えて、共同ホストを共同ホスト専用のブレイクアウトルームに待機させておき、ホストはメインルームに残り、参加者から呼ばれた際に呼ばれたブレイクアウトルームに共同ホストをアサインする体制をとりました。

終了時の行動指示をしておく

ブレイクアウトセッションの間に、グループディスカッションが指定の時間より早く終わってしまった場合に何をするべきかを指示しておくといいかもしれません。
私が別の研修で参加者としてブレイクアウトルームで議論をした際には、やはり他のグループが見えないので、メインセッションに戻るべきか、何か雑談をすればいいのかグループメンバー同士で迷うことがありました。

Zoomホストがブレイクアウトセッションを終了すると各ブレイクアウトルームでは、”メインルームに戻る” ボタンが1分間のカウントダウンとともに表示されます(1分経つと強制的にメインルームに戻されます)。この時に取るべき参加者の対応、例えば、メインルームに戻らずに時間いっぱい意見を交わしてほしいのか、どれぐらいのグループが議論を終えたかを把握するためにメインルームに戻ってきてほしいのか、を示しておけば参加者の迷いを減らすことができます。

リモートを言い訳にして色々諦めてしまわない

今回私たちは新入社員研修という必要不可欠なイベントのためにオンラインでの実施方法について創意工夫をしました。
社外のカンファレンスや有料の研修などもどんどんオンラインに対応してきています。
オンラインでのワークショップ実施事例や雑談の工夫に関するインターネット記事も続々と目にするようになりましたし、活用できるツールの種類も爆発的に増えていると感じます。
みなさんは、組織の改善やチームワークの向上を目的としたワークショップや創造性を偶発させるかもしれない雑談などを不急のものとして、外出自粛期間が終わってからやろう!ということにしていませんか?

ワークショップや雑談をすることでチームのどんな課題でも解決できる、とまでは言いませんが、働き方が大きく変わった今こそチームが一丸となり直面している課題に目を向けて解消していくことがより一層必要になっていると思います。この記事を読んで、コロナの収束を待つのではなく、リモートワークをしながらでも今までと同じ組織運営ができるように工夫ができないかを考えるきっかけを持っていただければ幸いです。