LINE社内テクニカルライティング講座第3弾!不要な人に社内文書を読ませないコツ

こんにちは。Developer Contentチームの矢崎です。LINE株式会社でテクニカルライターとして働いています。LINE社内で大評判のテクニカルライティング講座をブログにまとめてみたシリーズも第3弾になりました。(第1弾第2弾もぜひ読んでください!)

今回の記事では、以下のようにトピックが多く集まったときに「自分が書いたトピックを(その情報が不要な人に)読ませないためのコツ」を説明します。具体的には、順番に気を配ったり、情報の分類を気をつけたり、タイトルを工夫したり、という話をします。

※図のカード1個が1トピックです。この図ではトピックが6個あります。

全部読んでもらおうとしていませんか?

おそらくほとんどの人は、ほかの人の文章を読むときに、必要そうな文だけピックアップして読んだり、タイトルだけで内容を判断したつもりになったりすると思います。検索エンジンで検索したときに、表示された内容だけで、文章の内容を推測して読むか読まないか決めますよね。そういう感じです。

一方、自分が書いた文章は、ほかの人に1文字も逃さずに読んでもらえることを期待していないでしょうか?

みなさんが仕事で書く文章が最初から最後まで、1文字も逃さずに読んでもらえることを期待してはいけません。だって、自分がそうなんですから。

何の話をしているかわからなくなってきたかもしれないので、この記事の目的を宣言しておきましょう。

この記事で理解してもらおうとしているのは、こういうことです。

  • 読む人と書く人の間には、大きな大きな谷がある(読む人は自分が知りたいことだけ知りたい。書く人は自分が知ってることを全部書きたい)
  • 「不要なものを読ませない」ことが実現できると「文書全体がわかりやすくなる」
  • 不要なものを読ませないためにはコツがある

インターネットで、文章の書きかたについて調べてみると「文章を読ませるためのコツ」はたくさん見つけることができると思います。しかし、今回説明するのは完全に逆の「文章を読ませないためのコツ」です。こういった情報をインターネットで見つけることは、とても難しいと思います。この機会を逃さず、ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

第1弾と第2弾の振り返り

まずは、第1弾、第2弾の要点を振り返るところから始めましょう。これは、過去記事の宣伝も兼ねているので、読んだ!もう知ってる!しつこい!と思った方は、スッと次の見出しまで読み飛ばしてくださいね。

  • 第1弾:LINE社内で大評判のテクニカルライティング講座で説明した内容をあらためてブログにまとめてみた
    わかりやすい文章(1文)を書くには「たくさんの文案を書いて、良さそうなほうを選択する」ことが本当に大切だということを説明しました。具体的に、たくさんの文案を作るための代表的な手法を紹介しました。
    • 主語と述語を明らかにする
    • 文を短くする(ので、し、を敵視する)
    • 文を短くする(箇条書き、表を使って情報を分断する)
    • 語順に気を配る
    • 読み方を工夫しなくてもわかる文章を書く
    • 前提知識が必要な場合は注意する
  • 第2弾:LINE社内テクニカルライティング講座第2弾!1文では説明が終わらない文章を書くコツ
    「いくつかの文章をどのように組み立てていくと、わかりやすいトピックが作れるか」という話をしました。トピックとは、「タイトル」「概要」「本文」の3つの部品から構成されている文章の塊です。部品には図のような役割があるので、それを意識して書きましょう、という話をしたつもりです。
    特に「本文」の部分では、「情報を並べる順番がとても大切です」という話も書きました。

それではいよいよ第3弾、ある情報が不要な人に社内文書を読ませないコツの話を始めましょう!結果的に文書全体がわかりやすくなるので、ぜひ最後までお付き合いください!!

わかりやすいトピックでも適当に並んでいたらわかりにくい

イントロで説明したとおり、読者は、みなさんが書いた数多くの(わかりやすい)トピックの中から、必要な情報をピックアップして読もうとしています。

読者が必要とするトピックを見つけることさえできれば、わかりやすい内容になっているのでスムーズに必要な情報を得られるというわけです。

残念ながら、ここまで来てもまだ「わかりにくい」という評価を受けることがあります。それは、トピックが多いために読者が求めているトピックを見つけられないケースです。

ということで、多くの(わかりやすい)トピックを、わかりやすく整理して、全体としてもわかりやすい文章にするコツを説明していきましょう!

読者の立場によって整理する(取捨選択)

誰が何のために読む文章なのかを強く意識して、トピックの取捨選択をすると、わかりやすく整理できますよ、という話をします。

機能が多いソフトウェアの説明書を作るときに、管理者編や利用者編のように複数の冊子を作ることがあります。みなさんも、何度か目にしたことがあると思います。

ソフトウェアが同じだからといって、管理者ができることと利用者ができることを一緒に説明すると、わかりにくくなりがちです。読者は、たいていの場合、ひとつの立場(管理者の立場、または利用者の立場)であなたが書いたトピックを読みます。

そこで、管理者しか読まないトピックは管理者編に掲載して、利用者しか読まないトピックは利用者編に掲載するという分けかたをするわけです。編で分けない場合は、こちらには管理者用のトピックがあり、あちらには利用者用のトピックがある、ということが明示できていれば良いでしょう。

もし管理者も利用者も読む必要があり、まったく同じ内容のトピックがあった場合は、管理者編にも利用者編にも記載することがあります。こうすることで、利用者しかいないチームには利用者編しか渡す必要がなくなります。利用者からすると、自分にはまったく関係がない情報が書かれた管理者編を読まなくて済むので、格段に見通しが良くなり、とてもわかりやすく感じます。

同じことは上司、同僚、お客様でも発生します。その人に無関係のトピックや情報をふんだんに盛り込んだとしても、残念ながら読むものが増えるだけで、わかりにくさが増えていきます。情報が多いからわかりやすいわけではないのです。

トピックをうまく分類して、必要な人に必要なだけトピックが届くようにしましょう。

説明の順番を工夫する(読者が読むタイミングによって整理する)

第2弾で説明した「本文の並べかた」で利用した手法は、トピックの並べかたでも使用できます。時系列、粒度、重要度の順で、トピックを並べてみましょう。思いついた順、書きやすい順、伝えたい順でトピックを書くことは間違っていませんが、必ず並べ替えましょう。書いたそのままの順番で読者に渡してはいけません。

この3つの並べ方に加えて、トピックを並べるときにだけ使える「読者が読むタイミングによって整理する」という方法も紹介しましょう。「タイミング」と書くと時系列に近い気がしますが、ちょっと違う考えかたです。

ここでは、社内で情報を集積するためのツールを使っているとして、そのツールの使いかたを説明するマニュアルを作っているとしましょう。そのツールには、図の①~⑦の機能だけが存在するとします。

このようなときに使える整理方法が「読者が読むタイミングによって整理する」です。

このケースでは、(A)初めてそのツールを使うときにだけ利用する機能、(B)日常的に使う機能、(C)まれに使う機能の3つに整理します。このように分類して並べておけば、読者は自分が必要な機能が(A)(B)(C)のどの機能にあたるか考えることで、目的のトピックをすばやくみつけられる、という考えかたです。

私は、以下のように分類してみました。

いくつか抜粋して理由を説明してみましょう。

  • 「⑥画面の表示言語を変更する」は、(A)に分類できそうです。この機能は、日本語表示と英語表示を切り替える機能です。一人ひとり得意な言語が違うので、得意な言語でツールを操作できるようにするために用意されているのでしょう。日常的に、得意な言語が変わることは考えづらいので、(A)にしました。
  • 「①ページを作成する」は、(B)にしました。ページを作成する操作は非常に簡単で、たぶん作成ボタンをクリックするだけでしょう。そのため、初めに読んで覚えておけばいいという考え方もできますが、そういう考え方はしません。ここでは分類して探しやすくすることが目的なのです。

このように整理されていれば、このツールを使う人は、(A)の部分を読んで使い始められ、日常業務については(B)から探せば、目的のトピックに素早くたどり着けることが期待できます。もし、少し難しいことに挑戦しようとしてつまづいたときは(C)からトピックを探せば良さそうです。

もちろん、どのような意図で(A)(B)(C)に分類されているかを、読者に伝える必要があります。説明するのが大変なら(A)(B)(C)をそのまま1レベル上のタイトルにするだけで、意図を十分に伝えられるでしょう。

以上、読者がトピックを読むタイミングによって整理するといいですよ、という話でした。

区別できるタイトルを付ける(上級編)

次は、タイトルの力を再確認します。第2弾で紹介した「話題を限定する」だけではなく、ほかのトピックと区別できるタイトルを付けると、より分かりやすくなりますよ、という話です。

LINE社内には、新型コロナウイルス感染症について、社員に対応方法を周知するページがあります。

この図では、過去の目次(グレーのボックス)と、大きく書き換えた新しい目次(緑のボックス)を並べています。

この2つの目次で何が変わっていて、どのようにユーザーの行動が変わることが期待できるのか、という説明をしていきましょう。

新型コロナウイルス感染症に関して、社員が知っておくべきこと、知りたいことは多岐にわたります。たとえば「①在宅勤務のときの注意事項」、たとえば「②感染が確認された国、地域に渡航した場合の対処方法」という具合です。

①や②の情報を探すとき、グレーのボックスにある目次と、緑のボックスにある目次で、どのような違いがあるか見ていきましょう。そうすると「区別できるタイトルを付ける」ことの大切さを実感できるはずです。

まず「①在宅勤務」のときの説明が、どのタイトルの下に書いてありそうか考えてみてください。グレーのボックスから1つ、緑のボックスから1つ、それぞれ選んでみてください。

講義では、ありそうなタイトルにハートマークを付けてもらいました。その結果が以下の図です。

グレーのほうでは、いくつかのタイトルに分散していました。一方、緑のほうは1つに集中しているようです。

みなさんの考えも、この結果からあまり離れていないと思います。

正解は…?

タイトルに込められた工夫を説明する前に、正解を発表しておきましょう。

グレーのほうでは「社内における各対応」つまり上から5番目が正解でした。ハートの数を見ると30%~40%くらいの人が正解を選べています。

一方、緑のほうでは「全員が読んでください」つまり上から2番目が正解でした。95%くらいの人が正解を選べていることがわかりますね。

この正解率の高さは、知りたい情報をほとんどの人がすぐに見つけられることを意味していて、そのままわかりやすさにつながっていると考えられます。

不思議なことも起きています。グレーのほうでハートが付いていた「その他」「Q&A」「問い合わせ先・連絡先」は、緑のほうでも同じタイトルがあるにもかかわらず、ほとんどハートが付いていません。

これはおそらく、上から順番にタイトルを見ていき「在宅勤務」の説明がありそうなところに目星をつけていって、ありそうなところで立ち止まる、というアルゴリズムで目次を見ているためだと思います。

グレーのほうは、在宅勤務の情報がありそうなタイトルが最後まで見つからなかった人が一定数いて、その人たちが「FAQ」や「お問い合わせ先」を選んだと考えられます。

緑のほうは「全員が読んでください」というのだから、そこにありそうと思いながら、それでも念のため最後まで進むので、最後に「Q&A」や「お問い合わせ先」があってもそこにはハートを付けず、「全員が読んでください」に戻ってきてハートを付けたのではないでしょうか。

②感染が確認された国、地域に渡航した場合の対処方法についても同様です。

グレーのほうでは、「出張・旅行について」にありそうな気もしますし、「社内における各対応」に書かれているようにも見えますし、ひょっとしたら「感染予防」にもありそう…。と、ここまで疑ってくると「海外オフィスの状況」の中にもありそうな気がしてくるのが不思議ですね。

緑のほうでは、「過去14日以内に~」というところで明記しているので迷うことはないでしょう。

タイトルに込められた工夫

今はタイトルの話をしていて、特に「区別できるタイトルを付ける」ことが大切ですよ、ということを伝えようとしています。

上の事例では、タイトルだけを見て、求めている情報がどこにあるかを、正しく推測できる人が多くなりました。

みなさんも講義を受けた人も、本文は読んでいません。つまり、求めている情報がどこにあるかを正しく推測するためには、本文の分かりやすさは全く関係ないことがわかります。

ということは、タイトルに何か秘密がありそうだぞ、と考えられますね。そこで、緑のほうのタイトルの秘密を説明しておきましょう。

緑のほうは、「ほかのトピックと比べたときに、内容を容易に区別できるタイトル」が付けられています。

別の方向から言うと、1つのタイトルに注目したとき「自分が必要な情報があるか判断できるタイトル」になっているとも言えます。結果的に「今、自分が読むべきか」「(逆に)読まなくて良いか」を、タイトルだけで簡単に判断できるようになっているのです。

たとえば、「新型肺炎コロナウイルスの一般的な情報について」というタイトルでは、「一般的な情報について書いてあるだけなので、会社のルールを知りたい人はここを読む必要がないこと」を明らかにしようとしています。

「全員が読んでください」は、タイトルのとおりなので「今、自分が読むべき」と判断できます。

「風邪症状を~」「過去14日以内に~」「イベント~」「海外オフィスの状況」では、読者を極めて狭い範囲で限定しようとしています。自分が風邪症状なら読む/そうでなければ読まない、過去14日以内に渡航していれば読む/そうでなければ読まない、という具合です。これもまた「読まなくて良い」と素早く判断できるようにする工夫がされています。

このように「ほかのトピックと比べたときに、内容を容易に区別できるタイトルを付ける」というのは、多くのトピックがある文書で、読者を目的のトピックに素早く誘導するためにとても有効な方法です。「タイトルが、本文で説明する内容を表している」(話題を限定する)だけでなく、他と比べて区別しやすいタイトルかどうか、という点についてもよく考えてみてください。

まとめ

今回の記事では「不要な人に社内文書を読ませないコツ」と称して、あなたが書いた情報をすべて読者に読ませることを目的とせず、読者が必要なところを正しく素早く判別できるようにするために、書き手ができる工夫を説明してきました。

具体的には、複数のトピックをどのように並べると良いか、タイトルを一工夫すると、必要な情報が探しやすくなりますよ、ということを説明しました。

まず初めに、読者の立場で分けてみたり、読者が読むタイミングによって整理するといいですよ、という話をしました。

そして次に、前後の項目と区別できるタイトルであったり、自分が読むべきか読まなくてよいか判断できるタイトルをつけるといいですよ、という話をしました。

第1弾~第3弾で説明したことを心にとめて社内文書を作ってみてください。きっと今回説明した内容が力になるはずです。

あなたが社内文書を書かなければいけなくなったとき、以下の内容は絶対に覚えておいてください。

  • すべてのトピックを、最初から最後まで漏れなく読む人はいません。
  • それでも読者には、どれか少なくとも1つのトピックが絶対に必要です。逆に言うと、あなたが書く文章にまったく関係がない人は読者ではありません。

書き手として、提供できるトピックをすべて網羅するように努力しましょう。一方、読者は自分が必要なトピックだけを読んで帰りたいと思っています。読者が初めに目にするのはタイトルだけで、タイトルを読まずに本文にたどり着くことはありません。タイトルを見ただけで、自分が必要だと思っているトピックがどこにあるか、またはどこに無いかを推定できることが文書全体の「読みやすさ」や「わかりやすさ」に直結しています。
タイトルでうまく話題を限定してあげないと、「タイトルと全然違う内容が書いてあるじゃん!」という怒りを買うことになるでしょう。話題を限定することも忘れないでください。もちろん、1文がわかりやすいことも大切です。

すべてがうまくかみ合えば、とても分かりやすい、読みやすい文書、読者が求めている情報が簡単に見つけられる文書ができあがるはずです。がんばりましょう!

心の声

テクニカルライティング講座と、このブログ記事を通して、テクニカルライターが身に着けている理屈を言語化することに挑戦しました。

できる限り滑らかに読めるような文章にしようと、何度も何度も文章を研ぐように書き直しました。それでも誤植はありましたし(悔しい)、それでもわかりにくかったり(悲しい)、冗長だったりしました(恥ずかしい)。とはいえ、研ぎ続ける時間も用意できませんでしたし、研ぎすぎると伝えたい熱量も一緒に削れてしまう気もして、それぞれのタイミングで放流することにしました。ちょいちょい変なこと言ってるなーと思われるかもしれませんが、全部読んでもらえると嬉しいです。

より多くの人にこの記事が届いて、わかりやすい文章を書く人が増えるように、この記事もシェアしてもらえると嬉しいです!
「わかりやすい文章」ってどう書くの?って思った人への指針になるような文章になっているといいな。なってるかな?なってるよって言われたい!!

また1週間くらいエゴサーチするので、感想を聞かせて欲しいです!!よろしくお願いします!!!