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LINE社内テクニカルライティング講座第2弾!1文では説明が終わらない文章を書くコツ

こんにちは、Developer Contentチームの矢崎です。LINE株式会社でテクニカルライターとして働いています。先日、このLINE Engineering Blogで「LINE社内で大評判のテクニカルライティング講座で説明した内容をあらためてブログにまとめてみた」というタイトルで、1文を書くときに気をつけていることや手法について紹介しました。

前回の記事を簡単にまとめると「たくさんの文案を書いて、一番良さそうなものを選択することがとても大切です」という話を多くの例文を使って説明しました。まだ読んでいない方はぜひ読んでみてください。

今回の記事は、第2弾です。次のステップとして「1文では説明が終わらない文章をどのように組み立てていくとわかりやすいか」という話を、以下のような文章を例に説明していきます。

ここでは、このくらいの情報量の文章を「トピック」と呼びます。

第2弾を最後まで読むと、「トピック」を書くときにどのような点に注意すると、わかりやすくなるかということが理解できます。

早速、タイトルの話から始めましょう!

タイトルを付ける

まず、適切なタイトルを付けることの重要性から説明しましょう。
タイトルの目的は、書き手が文章で伝えたいことに読み手を近づけて、本文を読むための準備をしてもらうことです。もし、適切なタイトルを付けられれば、本文に多少問題があっても何とか読んでもらえますし、何とか理解してもらえることが期待できます。

ここでは、わかりにくさの原因がどこにあるか、という説明からスタートして、タイトルの重要性に進んでいきます。わかりにくさの原因を理解するための図を説明しておきましょう。

文章に関する登場人物は、書き手と読み手の二人です。そして書き手と読み手の間でやりとりが発生しそうな情報は、実はたくさんあります。
それが緑の円で示されています。
そして書き手が伝えたいことは、緑の円の中のごく一部、ここでは黒丸で表される場所だとします。

一方、読み手が期待する内容が、赤丸で表される場所だとしましょう。

さて、図の見かたはわかっていただけたでしょうか。この図で伝えたいことを理解してもらうために、書き手と読み手を、話し手と聞き手に置き換えて、実際のやりとりに置き換えてみます。
たとえばあなたがお昼ごろに、同僚に声をかけるとします。このときに、あなたと同僚との間で交わされる情報は、それこそたくさんあります。お昼ご飯を一緒に食べに行こうという話だったり、昨日のお昼にどこに行ったか聞こうとしていたり、お昼に行く前に片づけておきたい仕事の話だったり、全然お昼とは関係がないプライベートの話だったりしそうですね。
このように「やり取りが発生しそうな情報」が、緑の大きな円で表されています。

そしてあなたが伝えたいことは黒丸で表されており、聞き手が期待する内容は赤丸で表されています。
同僚は無意識のうちに「お昼の時間だし、お昼ご飯のお誘いかな?」(赤丸)と思って話を聞きますが、あなたは仕事の話(黒丸)をしようとしていました。

このように、黒丸と赤丸の間に大きなギャップがあるままで「例の話だけど~」と曖昧に話を続けてしまうと、「お昼の話だと思って聞いていたのに、なんだかよく分からないぞ…」と感じてしまうのは、簡単に想像できると思います。

同じことが、文章の書き手と読み手の間でも発生します。
書き手が文章で伝えたいことが黒丸で、読み手がこの文章に期待することが赤丸です。
会話では、相手の表情などを見て「あれ、戸惑ってる?ああ、仕事の話なんだけどさ」というように方向修正して、ギャップを小さくできますが、文章では相手の表情を見て説明を変える、ということはできません。

では、文章でどうやって赤丸を黒丸を近づけるかというと…、ここでタイトルを使います。本文で説明することを、タイトルで限定して黒丸に近づいてもらうというわけです。

タイトルだけでわかりやすさが変わるのかを疑っている人がいるかもしれないので、タイトルがよく分からない文章と、タイトルがよく分かる文章を見比べてみましょう。

まずは、タイトルがよく分からない文章の例です。

次にタイトルが良く分かる文章の例です。

どちらが読みやすいでしょうか?どちらが素早くこの文章の概要をつかめたでしょうか?どちらを読んでみよう、と思うでしょうか?「なるほど、タイトルを使って黒丸に近づいてもらうことは重要そうだぞ」と感じてもらえると嬉しいです。タイトルを使うことで、赤丸を黒丸に近づけた状態で文章が始まるので、読者がスムーズに読み進められると考えると良いでしょう。

あらためてタイトルの役割をまとめておきましょう。タイトルの役割は「書き手が文章で伝えたいことに、読み手を近づけること」です。つまりいいタイトルとは「書き手が文章で伝えたいことに、読み手を近づけるタイトル」ということになります。たとえば、問題点や結論をタイトルに書いて、話題を限定すると(読み手を近づけることができるので)いいタイトルになりやすいです。

※この記事では、社内文書などを書くことを想定して説明しています。社内文書は、とにかくページビューを稼がなくてはいけないブログ記事、広告、宣伝とは違います。社内文書では、目を引くタイトルを付けて、不特定多数の人を文章に引き付ける必要がありません。読者を集めないといけないブログ記事などでは、まったく違う考え方があると思います。それを否定するものではありません。

タイトルに続く文章の役割を知る

タイトルの役割の説明が終わりましたので、次はタイトルに続く文章の役割を理解しておきましょう。
ほとんどの文章は、図のように3つの部品から成り立っています。

1つ目はタイトル。これはすでに説明したとおり、書き手が伝えたいことに、読み手を近づけることでした。別の言いかたで「書き手が文章で伝えたいことに、読み手を近づけるために、問題点や結論を言って、話題を限定するための情報」とも言いました。

2つ目の部品は、ここでは「概要」と呼ぶことにします。「リード文」とか「導入文」とも呼ばれます。重要なのは名前ではなく目的です。好きに呼んで構いませんが、目的はひとつです。

そして、3つ目の部品は「本文」で、その文章で本当に伝えたいことが書いてある場所です。

ここでは「概要」に集中して話を進めましょう。
大事なことなので何度でも繰り返しますが、タイトルは「書き手が文章で伝えたいことに、読み手を近づけるために、問題点や結論を言って、話題を限定するための情報」でした。読者はタイトルを見たときに「このタイトルで書かれた文章が自分に今必要かどうか」を判断します。みなさんも何かしら長い文章を読まなければいけないとき、「タイトル」だけを追いかけて必要そうなところに目星を付けますよね。

このとき、いいタイトルが並んでいれば、必要なところを素早く見つけることができ、必要な情報を素早く手に入れることができるので、読者は「わかりやすい」と感じます。しかし、どうしても「その文章の話題を限定できるタイトル」をつけられない場合があります。短いタイトルでは、この文章の真の目的を伝えられない、という熱い思いがあるときをイメージしてください。

そのようなときに2つ目の部品である「概要」で、話題をさらに限定しましょう。書き手からすると、タイトルだけで必要十分な情報を提供できているように思えることもありますが、読者にとって必要十分かはまた別の話です。念のため「概要」でさらに話題を限定することをお勧めします。

そして3つ目の部品の「本文」では、タイトルと概要を使って読む価値があると判断できた読者に向けて、その文章で本当に伝えたいことを思いきり書くのです。

ここまでをまとめるとこうなります。

タイトルと概要を使って、この文章が読者にとって「読む価値がある」もしくは「読む価値がない」ということを判断できるようにしましょう。

「読む価値がある」ということを理解させることも大切ですが、社内文書では特に「読む価値がない」ということを理解させることも大切です。読者がこの文章は「私には読む価値がない」(私が必要としている情報ではない)と、タイトルと概要で正しく判断できれば、ほかの文書を探しに行くはずで、これは決して悪いことではありません。自分と関係ない文章を、無駄に読まされることほど腹立たしいことはありません。「読む価値がない」ことをしっかりと伝えるためにも、タイトルと概要に力を入れ、丁寧に書くようにしましょう。

タイトル、概要、本文の役割を、あらためて図で示しておきます。

まだタイトルと概要の役目を疑っている人がいたら、次の図を見てください。上の緑の箱と比べると、本当に伝えたいことを書く「本文」はまったく同じです。左側はタイトルがないパターン、右側はタイトルと概要がないパターンです。

必要な情報は本文に書かれていて、読みさえすれば、まったく同じ情報を読み取ることができるはずなのですが、特に右側を初めて見た人が、自分が読むべきかどうか正しく判断できるでしょうか?

タイトルと概要にどういう力があるか、理解してもらえると嬉しいです。

本文の並べかた

タイトルと概要、本文の役割については、理解できたと思います。ここでは「本文」を書くときのコツを紹介しましょう。

本文が1文や1段落で終わることは、ほとんどありません。第1弾の記事で紹介したテクニックを使って、どれだけわかりやすい1文を書こうとしても、1文だけでできることには限界があるのです。

ここまでの説明で『「わかりにくい」と感じるときは、書き手がこの文章で伝えたいことと、読み手がこの文章に期待していたことに、大きなギャップがある。それを解決するには「タイトル」と「概要」をがんばって書くといいよ』という話をしてきました。

ここでは「本文」がわかりにくいと感じる原因と、その解決方法を紹介します。原因を1文で書くと、こうなります。

文章を読んでいて知らない言葉や、知らない情報が立て続けに登場しているから、「わかりにくい」と感じています。

言い換えると、頭の中によくわからない情報をたくさん溜め込んだ状態が、わかりにくい、わからないと感じている状態とも言えるでしょう。

どういう文章だと分からなくなりがちか、という事例を、あえて抽象的に紹介しておきます。

  • まったく前提知識がない状態で文章を読み始めたら、事前の説明なく詳細な説明が始まって、すべての単語の意味が分からない。
  • 前回の記事で紹介した「晴れ時々曇り」と「晴れ一時曇り」のように、なんとなくわかる気がするけど、実際は知らない言葉、知らない情報が出てきている。しかし、意味を完全に理解していることを前提に話が進むので、細かいところが理解できない。
  • 数多くの情報が、行きつ戻りつしながら書かれているので、どういう順番で物事が発生するのか理解できない。

これを避ければ、わかりやすい文章になります。そのためのコツが「情報の並べかた」です。

絶対にやってはいけないのは、「思いついた順」「書きやすい順」「伝えたい順」に文章を並べることです。
私は「時系列」「粒度」「重要度」のいずれかの順に並べることをお勧めしています。

余談ですが、書くときの順番は、並べる順番とは無関係です。書くときは「思いついた順」「書きやすい順」「伝えたい順」をお勧めします。文章が書きあがるスピードがまったく違うと思います。原稿用紙に書くときはできなかったことですが、いまはみなさんパソコンを使って文章を書きますよね。思うがままに書いてき、おおむね書きあがってから順番を並べ替えてください。次に情報と情報の間をうまくつなぐように、新しい情報を足したり、余計な情報を削ったりすると、どんどんわかりやすい文章ができあがっていくことが実感できると思います。

では、どのような文書のときにどの並び順が適切か、「時系列」から順番に紹介していきましょう。

「時系列」は、操作手順を書くときにピッタリです。はじめにStep1をやり、次にStep2をやって…というように順番に操作を説明していくパターンです。将棋の棋譜のようなものも、時系列で書かれている好例ですね。

私たちは、時間が移り行く世界に生きているので、どのようなものでも時系列に書くことができます。しかし、この書きかたが許されるのは、時間経過が最も重要な情報として扱われる場合だけです。操作手順は、順番を変えることで結果が変わったりすることがあります。操作手順では、時間経過が最も重要な情報であることはわかってもらえると思います。
逆に言うと「時系列」以外の方法で説明したほうがわかりやすい情報については、「時系列」で説明しないようにしましょう。

次に紹介する並び順は「粒度」です。

「粒度」は、新しい概念を説明するときに使います。はじめに大まかな概念(少しの情報)から始まって、だんだん詳細な情報を増やしていく方法です。
上の図の文章では「オーディエンス」という機能を説明しています。タイトルと概要も使って、徐々に情報を増やしていることがわかってもらえるでしょうか。

そして、最後に書いてある「4種類のオーディエンス」が、この文章で本当に分かってもらいたい内容でした。試しに、以下のように順番を入れ替えてみると、あれ?え?何?わからない!と感じませんか?順番がとても大切なことを、分かってもらえると嬉しいです。

最後は「重要度」の話です。この並べかたは、議事録などで使うといいでしょう。

その名のとおり、重要なものから順に並べます。重要なものから読んでもらえれば、時間が無くなって途中までしか読んでくれなかったとしても、問題が起きにくくなることが期待できます。議事録などで話が出た順番にすべてを記録したら怒られた、だらだら書いた議事録が読みにくいと怒られた、みたいな話は、議事録を「時系列」で書いたために問題になったのかもしれません。会議では話が一直線に進むことはあまりないと思います。「時系列」で書いてしまうと、会議の内容を全部再現しないと理解できない議事録になってしまいます。議事録の目的は、会話を再現することではなく、決まったことや次のアクションをあとで確認するためなので、たとえ時系列で記録したとしても、「重要度」で並べ替えてみましょう。

以上で、本文の並べ方の話が終わりです。ここまでを読んだみなさんは、すでにタイトル、概要、本文の各部品について、どのようなことに気をつけると分かりやすくなるか、ということが理解できているはずです。
言い換えると、トピック(タイトル、概要、本文を1セットにした情報)をうまく書くことができそう、という気持ちになっていると思います。

まとめ

今回の記事では、1文では説明が終わらない文章をどのように組み立てていくとわかりやすいか、という話をしました。
トピックを構成する「タイトル」「概要」「本文」のそれぞれの役割を、以下の図のように説明しました。

特に「本文」の部分では、「情報を並べる順番がとても大切です」という話をしましたね。

第2弾はここまでです!実は新しい記事を書き進めていたところ、大先輩から「ちょっと長すぎるんで、途中で切ってくださいよ」というお願いが届いたので、ここで区切ることにしました。
ということで書きたいことがすべて書けていません。第3弾にもご期待ください。
第2弾が伸びないと第3弾が日の目を見ないので、ぜひこの記事もシェアしてくださいね!また1週間くらいエゴサーチするぞー!