はじめに
こんにちは。LINE Effective Team and Delivery室(以下、ETD室) Lean & Agile Teamのchonarこと長南(ちょうなん)です。私たちのチームでは、全社横断的にアジャイルコーチやスクラムマスターとしての支援、プロセス改善、研修やワークショップ実施などの支援を行っています。今春、新入社員向けの研修カリキュラムの一環として、「チームワークで大切なこと」をテーマにした研修を担当しました。
新入社員のチームで行うハッカソンの前後に以下2つの研修を提供しました。
・ハッカソン実施前: 「頻繁なフィードバックの大切さ 〜ETD室が考えたチームワークで最も大事なこと〜」
・ ハッカソン終了後: 「新卒ハッカソン研修ふりかえり」
本記事では、私たちETD室のメンバーがどんなメッセージを伝えるべくコンテンツ企画・実施したかをご紹介します。この記事を読んだ方が、ご自身の新入社員研修を振り返ったり、研修を企画・実施する際のお役に立てると嬉しいです。
なお、当研修で得られたオンラインワークショップや研修の知見については、同じく ETD 室から当研修を担当した Delivery Management TeamのTanigawaがブログで紹介していますので併せてご覧ください。
約100人でのZoom新入社員研修で得られたリモート研修・ワークショップの知見を共有します!
新入社員研修参加者の声
研修から月日が経ったある日、業務で関わりのあった企画職の新入社員から感想を聞く機会がありました。
新入社員の目から見て、研修はどの様な印象だったのか、そして配属後には影響があったのでしょうか?
実際のフィードバックをご紹介します。
印象に残っている内容や出来事
チームメンバーがハッカソンで感じた達成感は同じでしたが、不安などの気持ちは、人によって違っていたことがふりかえり研修のFun/Done/Learnによって言語化されました。その結果、より良いハッカソンになりました。
たとえば、営業職のメンバーから「一日目は営業職の自分が貢献できるか不安を感じていたが、企画職のメンバーが話を振ってくれたから助かった」という意見が出ましたが、企画職である私からすると営業職のメンバーからの「次何やる?」という一言がとても助かったと思っていました。
お互いの感謝を伝えあうタイミングになったので、ハッカソンのふりかえり研修を実施できて良かったです。
(達成感とか感謝と嬉しさで、実は一人で涙目になっていました。)
全員が、本当にいいチームだったという認識を持ってハッカソンを終えられました。
現場に配属されてから役立ったこと
色々ありますが、大きく2つあります。
①早めにフィードバックをもらうこと
資料作成の仕事を遂行しているとき、アジェンダとその内容のリストを最初に見てもらう、資料作成の大枠を見てもらう、資料詳細を見てもらう、というようにいくつかの段階を踏み、それぞれフィードバックをもらいながら進めました。
それでも完成まで、想定よりも長い時間がかかってしまいました。フィードバックをもらわずに進めていたら、手戻りも多く発生し、さらに時間がかかっていたと思うので研修で経験できていて良かったです。
②チームでふりかえりを行うこと
リモートワークによって、チーム間で話せていないことがあるのではないかと考えマネージャーに提案し、リモートワークに関するふりかえり会をチームで実施しました。
予想以上に、たくさんの意見がでて、いくつかチームのための新しいルールを決めることができました。
「久しぶりにチームで雑談時間が取れて楽しかった」というようなフィードバックももらえました。
リモートワークのような新しい試みに対してお互いの意見を伝えたり話し合う時間は、「チーム」にも「個人」にとっても大切であると感じ、本当に実施してよかったと思いました。
研修後、しばらく現場で働く期間を経たあとに受講者視点の感想を知る機会は限られていますが、今回は当日の感想や配属後の活用具合を聞くことができました。では、新入社員研修の内容を見ていきましょう。
新入社員研修の具体的な内容
1.プロダクト開発における "頻繁なフィードバック" の重要性
導入部分
・研修の冒頭で、「頻繁にフィードバックを得ることの大切さ」が研修のゴールであると伝える
・フィードバックの具体例の紹介
・人事評価や週次の1on1
・コードレビュー
・ プロダクトに対するフィードバック
・リリース後のユーザーからのフィードバック
フィードバックの重要性を実感できるゲームの実施
・ハッカソンの20チーム毎に実施
・フィードバックが早い場合と遅い場合の全体リードタイムの差を比較
・Zoomのブレイクアウトルーム機能とMiroのボードを使用
LINE STYLEの紹介
・LINE STYLEの「Stay a Step Ahead: 完璧さより、まず踏み出す勇気」を紹介
・「完璧を目指して抱え込むのではなく、途中で何度も共有してフィードバックを受けていますか?」というチェック項目との関連など
現場で起こり得る課題と解決策を元に、グループディスカッション
・現場で実践されている具体的な事例や解決策をいくつか紹介
・チーム毎に「ハッカソン期間中に、自分たちが出来るアクションは何か?」「ハッカソン中のチームのルール」を議論
研修後には、自分のSlackの分報チャンネルを紹介する新入社員や、ハッカソンのチームのSlackチャンネルで雜談リマインダーを設定するチーム、定期的にZoomを繋いで今の進捗や状況の共有をするチームなどがありました。
20チームそれぞれの工夫を凝らしており、ハッカソン期間中もチームの奮闘ぶりが伺えました。
2.ふりかえりの仕方
導入部分
・受講者に「ふりかえり」に対するイメージを質問
・ふりかえりの目的とゴールを伝える
・ふりかえりを実施し、ふりかえることの大切さを学ぶ
・新卒研修をふりかえることで、研修全体の気づき/学びを洗い出す
・配属先は違えど、各自が現場に持ち帰れる気づき/学びを得る
・過去を引きづらず、未来に活かせるふりかえり手法を知る
冒頭の質問に対しては「試験後にふりかえりをするが、次の試験に反映できなかった」など、ややネガティブなイメージを持っているようでした。
私たちETD室のメンバーは、ともすると、挙げてもらった意見のように、過去を反省するだけの"ふりかえり"ではなく、未来へのポジティブな話であることを体感してもらうことを、研修の目的として設計していました。
ふりかえりの具体的な手法の紹介
・以下の理由からFun/Done/Learnを採用
・課題に着目して、個人攻撃をしたり険悪なムードで終わることを防ぎたい
・研修のチーム解散後も各自の配属先で使いやすいものにしたい
・チームのメンバーに感謝を伝られるような場にしたい
・研修の学びを言語化したい
チーム内のFun/Done/Learnの結果は、受講者全体の学びに繋げるために、チームのふりかえり後に全体で共有しました。
一覧で見ると、総勢100人を超える受講者のふりかえりの観点の違いやボリュームはもちろん、一つのチームだけでは得られない学びが可視化されました。
ETD室としての学び
実は、"頻繁なフィードバック"に関する研修を実施する傍らでは、研修におけるメンバーの役割分担を見直したり、議論をチーム毎のSlackチャンネルに残してもらうことで、参加者が内容を復習できるようにしたり、私達自身も研修に対する"頻繁なフィードバック"を繰り返し、改善点を随時反映させていました。
研修実施後には、ETD室メンバーからのフィードバックや受講者アンケートを参考に研修全体もふりかえっています。
約100名20チームによるFun/Done/Learnのふりかえりやアンケート結果は、量が多く圧巻でした。
これらは、新入社員研修にとどまらず今後の研修やワークショップの改善に反映していく予定です。
さいごに 〜現場で実践してもらえる研修にするには〜
今回は、普段はあまり紹介されないLINEの新入社員研修の裏側を一部ご紹介しました。
結果的に受講者が配属後の現場で研修内容を実践していましたが、その様にするためにはポイントがあったと考えます。
想像力が成功の鍵を握る
本来はオフィスに集合した対面型の研修を想定していたものの急遽オンラインでの実施となったこともあり、いつも以上に多くのケースを想像し、ETD室のメンバーで随時共有していました。
例えば、以下の様な問いをもとにイメージを膨らませていました。
・研修中や研修後のイメージ
・「受講者や人事に何と言ってもらいたいか?」
・「受講者や人事にどんな表情をしているか?」
・「受講者や人事にどういう感想が聞き出せたら良いか?」
・配属後のイメージ
・「受講者はどんなタイミングでこの研修を思い出してくれそうか?」
・「受講者はどんな時に活用してくれそうか?」
・「職種によって実践のタイミングは異なるか?共通点や懸念点はあるか?」
以上が"研修を研修で終わらせない"研修をつくるためのポイントです。
研修前、研修中、研修後の配属…と時系列を追いつつ、かつ「研修中にこんな発言をしたら、どう受け取られるだろうか?」などと細部まで想像力を働かせてイメージを具体的に持つ事が肝要と言えるでしょう。
この記事を読んだ方が、受講者に現場で実践してもらえる研修を企画・実施する際の参考になれば幸いです。