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Developer of the Month 2019.1 今城洸幸様インタビュー

Clova Extensions Kit&Clovaスキルストアの公開に合わせてスタートした「Developer of the Month」。毎月一度LINEのAPIを利用して素晴らしい作品を開発していただいた開発者の皆様の中から一組を新宿ミライナタワーオフィスにご招待し、インタビューと副賞の贈呈を行います。

第6回「Developer of the Month」は、「幹事くん」を開発した今城洸幸様です。「幹事くん」は飲み会の幹事が負担と感じる「お店決めの手間」「良い店を選べなかった際の参加者の不満」をLINEのグループトークとAPIを利用して解決できるサービスです。なお今城さんはサービスの開発/リリースだけではなくコミュニティにおける登壇や、OSSへのcontributeの点でも大活躍されています。

今城洸幸氏

プロフィール

今城洸幸(いまじょうたけゆき)氏。2019年3月に卒業予定の芝浦工業大学4年生。2年前にスマートスピーカーをきっかけにプログラミングを始め、いくつものスキルを開発し、様々なイベントに登壇。春からは社会人としてエンジニアになる。

幹事必見。飲み会のお店をLINEグループ内の投票で決められるLINE Bot「幹事くん」

ーーこの度は受賞おめでとうございます!初の大学生受賞者となりました。まずはプロフィールを教えて下さい。

今城洸幸氏(以下、今城氏): この春まで大学4年生でもうすぐエンジニアとして社会人になります。スマートスピーカー向けスキルやBotの開発を行っています。

ーー春からはエンジニアとして就職されるのですね。まずは今回リリースされたLINE Bot「幹事くん」について教えてください。

今城氏: 飲み会の幹事には2つの負担があると思っていて、1つはお店を探す負担。もう1つがお店が微妙だった時文句を言われるのではないかという負担です。そこで、お店のリストをこちらで提示して参加者の投票によってお店を決める仕組みを実装しました。

ーー具体的にはどのようなフローですか?

今城氏: 飲み会をするグループのLINEに「ああ!飲みてぇ!幹事くん」を招待します。小ネタですが、幹事くんが常にリストの一番上に来るように「あ」から始まる名前にしました(笑)

幹事くんBotをグループに追加

ーーなるほど。そういう工夫は大事ですよね。

今城氏: グループ内で誰かが「〇〇駅で飲み会」と書くとLIFFが開き、その駅の飲食店のリストが出てくるようになっています。

幹事くんが候補が表示してくれる

ーーLINE BOOT AWARDS 2018でグランプリを受賞された高校生、西村 惟さんのToubans!もLINEグループを上手く利用したサービスでした。グループに向けてサービスを提供できるのはLINEならではの機能であり、その強みを活かしたサービスですね。 やはりこのあたりはたくさんのLINEグループを利用している若い方の柔らかい頭による発想が良サービス創出のキーなのだろうと思います。

ちなみにお店のデータはどこから取ってきているんですか?

今城氏: ぐるなびAPIです。

ーーAPIを使うと簡単にデータを取得できて便利ですね。次は投票ですか?

今城氏: 1人につき最低3店舗に投票する仕組みになっています。1つしか投票できないと考える人が多いと思ったので、あえて3件にチェックを入れないと投票を通せないようにしてあります。

誰かが投票を完了すると、元のトークルームに「○○さんが投票を確認しました」というメッセージと「投票済みの人数」が出ます。「現在の投票結果」も見ることができます。

ーー投票結果として出てくるお店の情報は何が書いてあるのですか?

今城氏: 予約するための電話番号と、お店のURL、それから実際にお店に行く時に必要となるアクセスです。

ーー必要なものが揃ってますね。何票入ったのかは表示されないんですね?

今城氏: 今はテスト段階なので、今後変えていくかもしれないですが、そこはあえて出していないんです。

ーー得票数が同じ場合はどうなりますか?

今城氏: 同率の場合は、五十音順の並びの上から順に表示しています。

ーーお店を決めてくれるのですね。決戦投票とかしたくないですもんね(笑)

今城氏: 迷ったんですが、このBotの目的は、早くお店を決めることなので、五十音順で出すことにしました。

ーー利用シーンと動機を上手く分析されていますね。

幹事くんがお店を決定

スマートスピーカーに出会って初めてプログラミングを体験

ーーLINEのAPIを知ったきっかけについて教えてください。

今城氏: もともとスマートスピーカーがすごく好きで、中でもClova推しでしたのでCEK(Clova Extensions Kit:第三者がClovaスキルを開発する環境)が出るのを待っていました。

ーーClova Waveを予約購入してくださったとか。

今城氏: そうです。予約者限定のオフ会に呼んでもらったのですが、そういうのもあってClova推しになりました。Clovaの一番いいところはLINEとの連携だと思っていたので、スキル開発をしながら、自然とMessaging API(注:Botを作るためのAPI)等の他のAPIとの連携もやるようになりました。

ーーClovaスキルはどのようなものを出されていますか?

今城氏: 「ボイスシンガー」というスキルを公開しています。まだ有名ではないけれどTwitterなどで活躍しているシンガーソングライターさんの歌をClovaで流して、気になったものがあったらLINE Botの方に詳細情報が送られてくるというものです。

ーー作ってみた感想はいかがですか?

今城氏: 開発はスムーズに出来たのですが、歌い手さんとコラボするのが一番大変でした。実際にコラボした人の何十倍ものシンガーソングライターさんに声をかけているんです。「怪しい」と断られたり、スマートスピーカーが何かを説明するところから始めないといけなかったり……それが大変でもあり、面白味があったことでもあります。

ーー他の人を巻き込むのは大変ですよね。結局何人くらいの方が協力してくださったんですか?

今城氏: ちゃんとコラボした方は10数名です。事務所に入っている方もいて、ご本人の了解がとれても事務所に断られたりもしました。でも、協力してくれた人はすごい協力してくれましたし、スマートスピーカーにも興味を持ってくれて、嬉しかったですね。

ーーそれは嬉しいですね。「幹事くん」と「ボイスシンガー」の話を聞いていて思うのですが、今城さんは課題解決を目指して作っているタイプですよね?

今城氏: そうですね。「幹事くん」もそうですし、「ボイスシンガー」も元々は自分が隠れている歌い手さんを知りたいけれど探すのが大変だというのがきっかけです。

自分専用のSDKを開発、OSSとして公開

ーーそれでは、LINE関連のOSSでリリースしているものを教えてください。

今城氏: ClovaのSDK(ソフトウェア開発キット)を「LOVE Clova」という名前でリリースしています。AWSのLambdaを利用したかったので、Lambda上で簡単に動かせるClova専用のSDKをリリースしています。初期の頃CEKは公開されてもSDKがなかったのもあって最初からずっと自分用に作っていました。公開する予定はなかったのですが、せっかく作ったので公開してみよう、と。

ーーQiitaに解説記事を書かれていて、多くのスターがついています。フィードバックはありましたか?

今城氏: 知り合いの数人から「すごく使いやすい」とコメントくださいました。もともとAlexaスキルキットと同じ動き方をするようにしていていたので、Alexaを使っていた人には使いやすかったようです。

ーー(笑)OSSを公開してみて、やりがいのようなものは感じましたか?

今城氏: もともと自分専用だったんですけど、公開して単純に「良かったよ」と言われたのは嬉しかったですし、スマートスピーカーの開発の普及をしたくて講師とかもやってきたので、それの手助けができて良かったです。

スマートスピーカースキルの開発を始めて人生が180度変わった

ーー最初にスマートスピーカーをそんなに好きになったのは何が理由だったんですか?

今城氏: たまたまスマート家電系の動画を見ていたら、スピーカーに「電気消して」と言って電気が消えているのを見てカッコいいなと思って。その時はまだ海外にしかスマートスピーカーがなくて、スマートスピーカーって何だろうと調べているうちにIT系面白そうだな、と。

ーーそうですよね、もともとプログラマーではなかったですもんね。

今城氏: そうなんです。プログラミングのプの字もやったことがなくて。ただ、こんなワクワクするものを作ってみたいなと思ったのがきっかけでプログラミングの世界に入りました。それがちょうど2年前くらいです。

ーーということは、二十歳くらいまではソフトウェアの開発をやろうとは全然考えていなかったと。

今城氏: はい。一応大学が電子工学科なので半導体とか物性とかハードウェア寄りのことはやっていましたが、ソフトウェアは全く。

ーーやり出して人生が変わったわけですね?

今城氏: 180度変わりました。スマートスピーカーとの出会いがなければ、ここにもいないですし、今の内定先ではなくてメーカーに就職していたと思います。

ーースマートスピーカーが出て時間が経ちますけど愛は冷めませんか?(笑)

今城氏: 最近よく言われるんですけど、内定先がスマートスピーカーに関係のない会社なので「スマートスピーカーを捨てるのか?」と。仕事としてはやりませんが、趣味としてスキル開発も登壇もやっていきたいと思っていますし、個人的に冷めたというのはないです(笑)。

ーーそれは良かったです(笑)。

イベント初参加からハンズオン登壇まで1年未満。コミュニテイにおける活動で大きく成長

ーー登壇の話が出ましたが、イベントに出席するようになったのはいつ頃ですか?

今城氏: 一番最初に、他社製ですがスキルを作ってみようというハンズオンに参加しました。

ーー何がきっかけだったのでしょうか?IT系の勉強会に参加するのはハードルが高くなかったですか?

今城氏: スキルを作って申請したら簡単にスキルが通って公開されちゃって。それでTwitterで「こんなスキルを公開しました」と書いたら、スキル開発をしているイベントを主催されているSmartHacksの山本さんに声をかけて頂きました。

ーースキルの公開がきっかけだったのですね。

今城氏: はい、その後オフィスに遊びに行ったりした後、イベントに誘って頂きました。誘ってもらっての参加なのでハードルは高くなかったです。

ーー知り合いがいるとハードルは下がりますね。それがいつですか?

今城氏: 2017年の12月くらいだと思います。ハンズオンは2018年初頭です。

ーーそんなに最近のことでしたか。最初は参加する側だったのがLTに出るようになって、LINE BOOT AWARDS 2018期間中にはとうとうハンズオンの講師まで担当して頂きました。

今城氏: そうですね。その期間が1年なかったので、わりかし早くいろんなことに挑戦できたなと思います。

ーーLINE主催のイベントだけではなく、他会場でも登壇や講師の機会が増えているようですね。やってみてどうでした?

今城氏: 1番は自分の自信になったのが大きいです。それまでLTで5分くらい登壇することはありましたけど、人にちゃんと伝わるように教えたり、2時間近く少人数ですけど人の前で話したりするのは、今後いろんなところで話したり伝えていくっていう仕事をしていくうえで自信になってすごい良かったです。

ーーそうでしたか。どんな仕事をするにしてもそれは必要な能力ですよね。

今城氏: あとは、それをきっかけでClovaスキルの開発を始める人がいらっしゃたり、「やってよかったです」と言ってもらえるのが自分の一番のエネルギーになったので、そういう意味でも良かったです。

ーーソフトウェアのいいところは、ユーザーが近くにいることですよね。

今城氏: そうですね。

ーーハンズオンの資料も私が作ったのを今城さんが改善してくれたものがとても良くて、今度は私が使わせてもらっています。中にいると当たり前になりすぎて、参加者の方の視点に立つのが難しくなってくるというか。今後も頼りにしてます。(笑)

大学生に伝えたいメッセージ

ーーそれでは最後に学生さんに向けてメッセージをお願いします。

今城氏: これは思うところがたくさんあるんですが、ClovaスキルやLINE Botは簡単に作って公開できるので、1人でWebサービスをつくるよりも敷居が低いと思います。SDKを使ったら高度なプログラミング技術もいらないですし。

パッと作って公開して、いろんな人に使ってもらってコメントをもらったりして。そのサイクルを回して、今の自分があると思うんですが、こういう経験は、学生とかTwitterにいる駆け出しのエンジニアの方にはいい経験になるんじゃないかなと思います。

また、Clovaに限っていえば、LINEっていう誰もが使っているアプリの中で開発できるので、敷居が低いだけじゃなくて、ユーザーに役立つものがまだまだ作れる余地があるのがいいところです。

実際、今日の朝に「幹事くんで居酒屋を決めて飲み会行ってきました」とメッセージをもらっていて、そういう役立つものを作れる可能性があるのでスマートスピーカーやLINE Botを勧めたいと思います。

ーーコミュニティも充実していますよね。

今城氏: そうですね、ハンズオン等のイベントも充実していますし、右も左も分からない方が来てもとっつきやすいかなと思います。自分としてもそうした面を押していって、エンジニアみたいな方が増えていってもらえたらなと思いますし、そういう活動は今後もしていきたいです。

また、スキルを公開するだけでオリジナルのTシャツももらえるので、そういうのもモチベーションになります。敷居が低いと言っても実際に作って、Twitterで「つくりました」と公開するのは勇気がいると思うので、モチベーションを保ちやすいのはありがたいです。

ーーそうですよね。他には、何か言っておきたいことはありますか?

今城氏: 「幹事くん」はまだまだ未完成なんです。飲み会のプロセスには、お店を決めるだけじゃなくて、日付の調整とか、そもそも誰かが「飲もうよ」と言わないと飲み会はできませんから、解決すべき問題はたくさんあると思っていて。その全部をLINEで手早く決められるようにしたいと思っています。まだまだ進化していくサービスです、というのを最後に言いたいです。

ーーありがとうございます。これからを楽しみにしています。

制作:SmartHacks