Developer of the Month 2018.10 加川澄廣様インタビュー

Clova Extensions Kit&Clovaスキルストアの公開に合わせてスタートした「Developer of the Month」。毎月一度LINEのAPIを使いこなして素晴らしいサービスをリリースしていただいた開発者の皆様の中から一組を新宿ミライナタワーオフィスにご招待し、インタビューと副賞の贈呈を行います。

第3回「Developer of the Month」は、Clovaスキル「家族のお手伝い帳」を開発したチーム家族愛の加川澄廣様です。「家族のお手伝い帳」は、LINE BOOT AWARDS 2018のファミリー部門賞、ロボスタ賞も受賞しています。

加川澄廣氏

プロフィール

加川澄廣(かがわすみひろ)氏。ピースミール・テクノロジー株式会社でプロジェクトマネジャーを務めるかたわらでスタートアップ株式会社CompassのCTOも兼任。

LINE BOOT AWARD 2018の受賞は予想通り!?

ーーまずは現在のお仕事を教えてください。

加川澄廣氏(以下、加川氏): 今は2つの仕事をしています。1つはベンチャー企業のCompassでCTOとして、LINEのBotを使ってキャリアカウンセリングができるサービスを開発しています。今はまだ予約や適職診断ができるくらいなのですが、ゆくゆくはBotを介して会話をして自動でカウンセリングができるように持っていきたいと考えています。

実はこの会社に関わることになったのは自治体向けLINE@活用ハッカソン「GovHack神戸」なんです。この時に一緒のチームになった人がCompassのCEOです。

ーーそうだったんですか。

加川氏: LINEさんがきっかけで人生が変わりました(笑)もう1つはピースミール・テクノロジーで自治体が業務システムを導入する際の支援やシステム基盤構築のコンサルをしていまして、プロジェクトマネジャーをやっています。

ーー全然違うお仕事をされているんですね。LINE BOOT AWARD 2018のお話をお伺いしたいのですが、まずは受賞おめでとうございます。

加川氏: ありがとうございます。発表の前はドキドキしました(笑)

ーー会場は人も多いですし、ものものしい雰囲気がありましたよね。

加川氏: ファイナリストに残られた作品はどれも素晴らしくてプレゼンを聞いているとドキドキしましたが、内心(賞を)とれると思っていました。

ーー自信がありましたか?

加川氏: プリンターという変化球を使っているものは他にありませんでしたし、コミュニケーションをつなぐことを素直に重視したので、そこは評価していただけるんじゃないかと思いました。

ーー審査項目はよく読まれましたか?

加川氏: 読みました。プレゼン資料も審査項目に全部対応するようにつくりました。

ーーLINE BOOT AWARDは他の賞とちょっと違うんですよね。「儲かる」より、「コミュニケーション」を重視しているので。

加川氏: 「コミュニケーションの総量を増やすこと」と「「CLOSING THE DISTANCE(距離を近づける)」の2つが大事な価値観だという理解があったので、そこは本業のコンサルチックに評価軸に刺さるプレゼンを考えました。エントリーしたスキルの中には、すごくギークなものやぶっ飛んだものもありましたが、ストレートに要望に応えているという点では自信がありました。ファミリー部門の中では、ですが。ただ本スキルで家族のコミュニケーションは増えますが、あくまで家族の中のことなのでLINEユーザー自体が増えるわけではありませんが。

ーーいえいえ、お子さんに使っていただけたらLINEのユーザーも劇的に増えることになると思いますよ。おじいちゃんとお孫さんのコミュニケーションが増えそうです。

加川氏: それはそうですね。子供を預けることも多いので、そういう時にも使ってもらえたらいいですね。

応募した後に何度も書き換えたシナリオ

ーースキルのフローを教えていただけますか?

加川氏: 実は応募した時からファイナルに出るまでにシナリオをかなり書き換えたんです。スキルで出来ることは変わらないのですが、利用できるシーンを見直しました。

ーーそれはご家族からのフィードバックを受けてですか?

加川氏: それもありますが、LINEさんからのコメントが大きかったです。大阪のハッカソンでこの作品を作った時はプリンターがあることが前提になっていました。でもスキルとして公開するにはプリンターなしでも動かないといけない。それでBotの方を充実させたのですが、最後のお手伝いポイントを使うシーンに違和感があると言われて、そこも書き換えました。

ーー実装する前にシナリオをしっかり書かれたんですね。

加川氏: そうですね。お手伝いの報告をするときに子供がどう発話をして、その時の状態によって、Clovaからどのようなリプライをするかなどを練りましたね。あとはやっぱり説明が冗長だと子供が飽きて離脱してしまうのでClovaの発話は出来るだけ素直に、そして簡潔にしました。

ーー子供が飽きない工夫は他に何かされていますか?

加川氏: 友達が問いかけるような発話にしました。「100ポイントあります」ではなく「100ポイントあるよ」と表現したり。「100ポイント貯まったらゲームをもらう」など目標を設定できるようにしてあるので「あと何日間で達成できるよ」という情報も喋るようにしました。単純にポイントを聞いたらポイント数を答えるのではなくて、次に何をしたらいいのかを教えてくれるものにしたかったんです。応募した時点ではそういう工夫は全然なかったのですが。

他には効果音を追加しました。一本調子に聞こえるというコメントがあったので、目標のポイントを達成したらファンファーレが鳴るようにしたり、ポイント没収の時は「ファンファンファンファーン」と残念な音が鳴るようにしています。

ーーVoiceApp Labさんもおっしゃっていましたが、演出は大事ですよね。

加川氏: そうですね。継続してもらうための没入感と世界観を音でもつくるようにしました。

「お手伝い」を通じてコミュニケーションが増える仕掛け

ーー「100ポイントでゲームをもらう」などの目標の設定やお手伝いの登録は Botで出来るんですよね。

加川氏: 設定自体は親がしますが、内容は親子で話し合いってもらいたいです。お手伝いをしたら何円もらえるというストレートなものではなくて、どのくらいお手伝いをしたらどういうご褒美があるかを決めてもらいたいです。

ポイントとご褒美の内容を決められる

加川氏: 子供がClovaにお手伝いを終えた報告をすると親のLINEに通知が来るようになっています。終わったお手伝いに対して親が「完璧!(10pt)」「いいね(5pt)」「もう少し(2pt)」「やりなおし(0pt)」で評価をします。親が評価をしないとポイントが貯まらない仕組みになっています。

ーー評価システムがないと手抜きをしてしまうお子さんも多いと思いますが、そういった点もBotを利用して解決されており高評価に繋がったのではないかと。

加川氏: そうですね。他にも親がやってほしいお手伝いを3つまで登録することができます。登録してあるものをLINEで送ると、子供がClovaを起動した時に「お父さん、お母さんがゴミ出しをしてほしいみたいだよ」と喋ります。親がやってほしいお手伝いをするといつもの倍のポイントが貯まります。

ポイントは貯まるだけじゃなくて、悪いことをすると没収されます。これは大阪のもくもく会で立花さんにアイディアをもらいました。

ーー妹をいじめたらポイントを没収する(笑)躾にも使えますね。せっかく貯めたポイントの没収は堪えるらしく、うちの息子も以前より良い子になりつつあります(笑)。本当にBotの使い方が上手いなと。

加川氏: ええ、Flex MessageやLIFF等最新のAPIも利用してできるだけ簡単に操作できるようにしました。キーボード入力は目標ポイントとご褒美を登録するだけで、あとはボタンのタップで済むようになっています。

楽しくお手伝いを継続する習慣がつく

ーーご家族の反応はどうですか?

加川氏: 下の子は使ってくれますね。我が家は定額のお小遣い制ではなく、お手伝いをしたらお金をあげるかほしいものを買うかするんです。

ーーそういうご家庭は多いですよね。

加川氏: 上の子は大きいのでゴミ捨てなどのまとまった仕事を任せているのですが、下の子にも継続することを覚えてほしくて。それがこのスキルの発想のベースなんです。今は下の子はお手伝いする習慣がついてきて、最近はお風呂掃除などできることも増えてきています。

ーーお手伝いでも成長ぶりがわかりますね。

加川氏: そのために最後に履歴をつくったんです。お風呂掃除ができるようになった、洗濯物を入れられるようになったなどで成長を感じてもらえれば。

ーーあとから見返すのが楽しみです。お風呂掃除とか結構大変ですもんね。

加川氏: 力もいりますしね。でも下の子は綺麗にやってくれますよ。日々ポイントが貯まっていることが実感できるのが良いんでしょうね。

サービスの中でプリンターが果たす役割は?

プリンターと連携すると溜まったポイントをプリンターで出力可能

ーーClovaとプリンターをつないで、溜まったポイントをプリンターで出力できるようになっていますが、プリンターは誰でも簡単に使えますか?

加川氏: 中身はラズパイ(ラズベリーパイ)で、プリンターを買えば設定は誰でもできます。今後はサンプルコードを公開して、この部分だけ変えれば設定できるよ、という風にさらに設定を簡単にしようと思っています。

ーー良いですね。是非一緒に企画しましょう。ラズパイは持っている方が結構多いですよね。ちなみにプリンターはネットで買えるんですか?

加川氏: ええ、Amazonで「サーマルプリンター」で検索すると出てきます。

ーー3500円くらいですね、安いですね。

加川氏: それぐらいの値段です。プリンターを入れている箱も自作のものですが、これのレーザーカッター用のモデルも公開する予定です。

ーーちなみにプリントされる紙のデザインも簡単にできますか?

加川氏: これは画像の上にポイント数を書き込んでいくだけなので簡単です。いくつかテンプレートを用意しておいて、デザインを選べるようにもできると思います。

ーーいいですね。このスキルはプリンターがなくても素晴らしいと思いますが、プリンターがミソであるところもありますよね。他のサービスでもプリンターを利用することでもっと良くなるサービスは多いと思います。

加川氏: やっぱり声は一過性のものなので定着しないですよね。定着するから、きっとお役所とかは紙から逃れられないのだと思うんですけど。確定した情報は紙に出しておく、それ以外は画面でも声でもいいと思いますが、情報によってアウトプットは変わっていいと思うんです。VUIだからといって全て音声じゃなくてもいい。プリンターは、VUIを補うことも含めて、VUIの可能性を広げることになるんじゃないかと思います。

ーーお話を聞きながら思いましたが、スマートフォンを敢えて子供に持たせたくないという時にいいかもしれないですね。お子さんにスマホを持たせていますか?

加川氏: いえ、義務教育中には持たせたくないと思っています。

ーー私もです。そうすると中学生でもこういうスキルは使えるかもしれないですね。

加川氏: スマホは持たせたくないですけど、お子さんの生活にもテクノロジーで解決できる課題は多いです。そのような場面においてもVUIはいいですね。

ーーアナログとデジタルの間にあるサービスと言えるかもしれませんね。

加川氏: そうですね。そういうものをつくりたいですね。

LIFFとFlex Messageで広がるBotの表現の幅

ーー加川さんはBotを使い始めて長いと思うのですが。

加川氏: LINE Messaging APIが出た頃からなので、2年半くらい使っています。

ーーいろいろAPIが出ましたが、よくご利用頂くAPIはありますか?

加川氏: やっぱりLIFFはすごいですよね。吹き出しだけじゃなくて、画面が出て文字入力以外の操作とインタラクティブなやりとりができるようになって幅が広がりましたよね。LIFFがなかったときは、Botにメッセージを送ってもらうのが大変でしたけど……

ーー文字入力がユーザーの離脱ポイントになることも多かったかと。

加川氏: やってほしいお手伝いの登録も、LIFFがなかったら、キーボードを出して入力してもらうかイメージマップで選択してもらわないといけなかったですよね。入力内容が少し違うと認識できなかったり。複数選択するのも大変で、1つめを入力して、次に2つめを入力してと指示が多かった。それがLIFFでは選択肢の中から選ぶだけ。選択肢が決まっているものはLIFFを使った方がいいですし、ユーザーさんも電車の中でも片手でパパッと選べる。それはかなりBotの可能性を広げますよね。

ーーFlex Messageも使われてますよね?

加川氏: テキスト以外はほぼFlex Messageです。

ーーできることが増えましたよね。これまではボタンが2個までとか、文字数の制限とかがありましたが、それがなくなってきました。

加川氏: そうですね、文章の折り返しもできますし、ボタンの数も無制限になりましたし、表現の幅が広がりましたよね。従来は画像、テキスト、ボタンの吹き出しがそれぞれ分かれていて、どこまでが1つのメッセージかわかりにくかった。それが1つの画像にまとまったのでユーザーにとってわかりやすいUIになりましたよね。その点でもすごく良いと思います。

ーーありがとうございます。ところでクーポンは画像ですか?

加川氏: 画像です。これもFlex Messageを使っています。

ーーLIFFやFlex Messageを使うのは簡単でしたか?

加川氏: 私はサーバーサイドの人間なので画面をつくるのは苦手なのですが、枠を用意してもらっているのでやりやすかったですし簡単でした。デザイナーじゃなくても綺麗なものができます。そういう意味ではサーバーサイドの人間でも取っ付き易いと思いますよ。

LINE Thingsのメリットは省エネ

ーーLINE Thingsが出たのですが、加川さんは何かやってみたいことはありますか?

加川氏: 本スキルにはまだ使えないと思いますが、たとえばビールや卵などのストックがなくなったことをセンサーで検知できるようにして、少なくなったらLINEに通知がきて買えるようにしたいですね。

ラズパイでもできないことは無いのですが、電力を食いまくるのが問題です。Wifiも電池を食いますね。

ーーなるほど、電源問題はありますね。

加川氏: ラズパイを買ってきてWifiをつなげるのも一般ユーザーには結構大変なんです。だからLINE Thingsとつなげれば、UIも使えますし、スマホっていういつも肌身離さず持っているものとつながるので使いやすいですよね。

Botを使ったキャリアカウンセリングを開発中

ーー最後に今、加川さんが開発されているサービスについて教えていただけますか?

加川氏: 「CHOICE!」というサービスをつくっています。11月末に相談内容のヒアリングフローをリニューアル公開しました。これはBotでキャリアカウンセリングができるサービスで、たとえば相談したいと思っている人が選択肢をぽちぽち押していけば、内容が絞れていって、アドバイスのページを見れるようになっています。FlexMessageやLIFFがなかったときは、テキストで相談事を入力してもらっていたので、ユーザーが欲しい情報を得られるまでに時間がかかっていたのですが、今は知りたいことを短時間で情報を見つけてもらえ、自動で提供できない情報は、テキストで詳細を入力して質問を送信してもらえるようになっています。

ーーLIFFがなかったら公式ページに飛ぶステップが挟まったと思いますが、LINEの中だけで完結するようになったんですね。

加川氏: そうですね。「CHOICE!」が想定しているユーザーは出産や結婚、離婚、介護、中退、引っ越し、闘病などを転機に、キャリアアップや社会復帰を目指す現在ハイキャリアではない方です。そういう方にはLINEのほうが忙しい日常の隙間時間に使って頂けると思うのでBotを使っています。現在ハイキャリアの方は既にリクナビやWantedly、ビズリーチなど転職活動を高く意識したサービスを利用しているのではないかと。

今後はさらに、キャリアコンサルタントに相談した後に仕事の紹介などをしていきたいと思っています。これは自治体、神戸市を中心に関西地域からお話しを沢山いただいて、来年は具体的連携して進めています。

ーー自治体さんと連携しているんですか?

加川氏: ええ、就労支援サービス窓口でのチラシ設置や、イベント提案、他にも母子・子育て支援課向けにサービスを開発したり。「CHOICE!」も窓口導入を目指しているので、色々カスタマイズして相談ツールとしてBotを提供する予定なんです。 こういう本業に生かすためにスキル開発をしているんですよ(笑)趣味でもありますが。

ーースキル開発を楽しんでいただけているということですよね(笑)今後も楽しみにしています。ありがとうございました。

制作:SmartHacks

 

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