LINEの開発組織の部門やプロジェクトについて、その役割や体制、技術スタック、今後の課題やロードマップなどを具体的に紹介していく「Team & Project」シリーズ。今回はData Science室に新卒で入社した若手エンジニアたちをご紹介します。22卒入社の安藤正和と栗本真太郎、21卒入社の松田祐汰と武田拓弥の4名に、LINEに入社した経緯や担当する業務、今後の目標などを聞きました。
Data Science室で働くメンバーの自己紹介
――みなさんの所属チームの概要やご自身の役割を簡単に教えてください。
安藤:22卒入社の安藤正和です。私はFinancial Data Scienceチームという、LINE Pay関連のデータを分析するチームに所属しています。2022年6月からチームに配属されまして、メンターの先輩にサポートしてもらいつつ、施策の効果検証やサービスのブランド調査のデザインと分析などの業務を主に担当しています。
栗本:22卒入社の栗本真太郎といいます。私は広告事業に関する分析をするAd Data Scienceチームに所属しています。主にLINE NEWSの広告に関する分析を担当しており、A/Bテストの設計・実施や分析用のダッシュボード作成などをしています。
松田:21卒、入社2年目の松田祐汰です。栗本さんのオフィシャルセンパイです。私はLINE公式アカウントの分析をするOA Data Scienceチームに所属しています。担当領域としては、主にLINE公式アカウントの友だち追加についての分析と、サービスのUX(ユーザーエクスペリエンス)に関する分析をしています。
※オフィシャルセンパイ:新卒入社の方とチーム外の新卒入社の先輩とで、1ヶ月に1回ご飯を食べながら雑談や仕事の悩みの相談ができるLINEの制度のこと
武田:21卒入社の武田拓弥といいます。安藤さんのオフィシャルセンパイです。LINE MUSICやLINEギフト、LIVEBUYなどの分析をするFamily Service Data Scienceチームに所属しています。部署の中で、私は主にLINE MUSICのProduct Planningチームの分析業務を担当しており、事業KPIの策定やKPI達成のためのユーザーの行動探索などをしています。
LINEへの入社の経緯
――次に入社の経緯について伺います。さまざまな就職先の候補があったと思うのですが、LINEを選んだのはどうしてでしょうか?今年入社されたばかりの、安藤さんと栗本さんにお聞きしたいです。
安藤:学生時代のことから話すと、私は大学と大学院で心理学を専門に学んでいました。所属していた研究室では心理統計学という領域を扱っており、私が注力していたのはお金に関する人間の意思決定のモデリングでした。博士課程に行くことを考えた時期もあったのですが、その道では自分が本当にやりたいことに携われないと考えて、データサイエンティストを目指すようになりました。
LINEを選んだ経緯は、指導教員に誘われて参加した研究会で、LINEのデータサイエンティストと話す機会があったことです。その方が、自分と同じ動機でデータサイエンスを志してLINEに入ったことや、希望する業務に携われて非常に楽しいといった話をされており、それを聞いてLINEが第一志望になりました。

――データサイエンティスト職の選考過程で実施されたことを教えてください。
安藤:技術試験と2回の面接がありました。自分はわりと天邪鬼な性格なので「自分の現在の知識で受からないのならば諦めよう」と思い、技術試験は特に対策をせずに受けたのを覚えています。面接では、冒頭で10分ほど自分の専門領域やLINEで担当したい業務のプレゼンをしました。
面接で、個人的に印象に残っていることがあります。私はプログラミング言語のRが好きなんですが、1回目の面接を担当してくれたデータサイエンティストのうちの1名が、日本のR界の重鎮である湯谷啓明さんだったんです。湯谷さんと面接で初めて会った際に、緊張しすぎて「湯川さん」と間違えて呼んでしまい、すぐに「湯谷です」と訂正されました。当時は「あー、落ちたな……」と思っていました。
――それは相当に焦りますね(笑)。無事に入社できてよかったです。では、栗本さんにも伺います。
栗本:まず私はLINEともう1社から内定を頂いていたのですが、そちらでは別の職種での内定だったので、データサイエンティスト職として働くことができるというのが主な理由の1つです。行動の背景理解や意思決定の支援には昔から強く興味を持っていて、研究でもそのようなテーマに取り組んでいたこともあり、こういったことを仕事にできたら楽しいだろうなと思っていました。
また、LINEから内定を頂いた後、他の会社のデータサイエンティスト職は探しませんでした。就活に時間を割く余裕があまりなかったというのはありますが、求人ページに掲載されていたLINEのデータサイエンティストに関連する様々な記事やTech-Verseの前身イベントであるLINE DEVELOPER DAYの発表などを見て、この会社には欲しい要素が十分あるなと感じたためです。欲しい要素というのは、例えば他職種と協調して仕事を進めること、分析のノウハウが組織内で蓄積されていること、社内で分析チームが一定の立場を得ていることなどです。

――選考過程ではどのようなことを経験しましたか?
栗本:オンラインの技術試験では、データ分析とコーディング、数学の問題が出題されました。全部で5問あるうち、分析が1問、コーディングが1問、数学が3問という配分でしたね。面接は安藤さんと同様に2回あり、その後に選考とは関係のない人事面談もありました。
印象深いエピソードは、1回目の面接です。面接官が2人おり、一方の方から「詳しい技術はありますか?」と質問されました。私は「現役で分析業務に携わっている方と比べたら、専門と言えるような強みは何もないな」と思ったので「特にないです」と答えたところ、その方がすごく渋い顔をされていました(笑)。慌てて「研究で扱った領域のことであれば、ある程度知識があります」とフォローしたものの、その方がずっと渋い顔をされていて。「落ちたなー……」と思いながら面接を受けました(笑)。
――お二人とも、選考時には落ちたと思っていたんですね。無事に通過してよかったです。
充実していた入社後の研修
――入社後は、新卒向けの研修が行われたと思います。このプロセスの中で、働くうえでプラスになった要素をお話しください。
栗本:最初に全職種向けの研修が実施されるのですが、その中でも特に書き方講座や伝え方研修が印象に残っています。SlackやWikiなどでの文章の書き方や、業務での適切なコミュニケーションの方法について学ぶことができ実践的でした。さまざまな職種や立場の人々と一緒にプロジェクトを進めることが多いので、これらの研修で学んだことは今でも役立っています。
安藤:新卒研修の中に、データサイエンティストや開発系のエンジニアたちが5人くらいの班になり、アプリケーションを作るという技術研修がありました。同期のメンバーのすごさを目の当たりにできただけではなく、各種ツールの使い方や業務で必要な知識などを一通り学べました。それによって、チームに配属されてからもスムーズに作業に入れました。
松田:私も技術研修はかなりの学びがありましたね。技術研修は大きく分けて、技術職のメンバーだけではなく企画や営業のメンバーと一緒に取り組むハッカソンと、技術職のメンバーだけで開発をする研修の2種類があります。どちらも学びが大きいですが、データサイエンティストにとっては特に前者のハッカソンが重要です。業務の中で、企画や営業の方々とコミュニケーションを取りつつ仕事をする場面はかなり多いですから。
武田:私も、他職種のメンバーと一緒に取り組んだハッカソンがかなり印象深いです。ハッカソンで学んだヒアリングのスキルや要件を決めるスキルなどが、今も役に立っています。
(参考記事) LINEの新卒エンジニアが入社後どのような数ヶ月を過ごすのかご紹介!研修のお題は「LINEクローンを作る」
携わったプロジェクトの事例
――チーム配属後にみなさんが取り組んだプロジェクトの事例をピックアップしてお話しください。楽しかったことや大変だったこと、成長できた点などを盛り込んでいただけるとありがたいです。
栗本:チーム配属されてから2カ月後くらいに、LINE NEWSの売上分析をするダッシュボードを作りました。チームメンバーにサポートしてもらいながら、LINE NEWSの企画メンバーの意見をヒアリングしつつ開発したもので、現在LINE NEWSの定例で実際に利用されています。
まず楽しかったこととしては、ダッシュボードを使う方々の意見をもらいながら、どうすれば実際の意思決定の役に立つものになるかを自分なりに工夫して作業できたことです。その一方で大変だったのは、「良いダッシュボードとはそもそも何か」という肌感覚が自分になかったことでした。
プロジェクトを経験したことで、日々の業務において役立つツールとはどのようなものか、理解が深まりました。さらに、サポートに入ってくれていた先輩やチームメンバーのやりとりから、業務での適切なコミュニケーションの取り方を学べました。
安藤:特に印象深いプロジェクトは「LINE PayのLINE公式アカウントを期間中にフォローするとスタンプがもらえる施策」の分析業務です。このプロジェクトでは、LINE Payのコミュニケーションチームの方たちと一緒に仕事をしました。彼らが何を求めているのか、そして自分はデータサイエンティストとして何をすべきかを考えるのが、難しくもあり楽しくもあるところでした。
大学時代の研究では「適切な方法で分析し、その結果を考察すること」だけに注力すればそれで良かったのですが、業務ではそれに加えて「分析した結果をいかにして事業のネクストアクションにつなげるか」を意識し、他の方々に提案する必要があります。それを念頭に置くようになったのが、学生時代と社会人との一番大きな変化です。
松田:思い入れが強いのは、LINEアプリ上のさまざまな画面に、おすすめのLINE公式アカウントを表示するプロジェクトです。チーム配属1カ月後から現在まで、私がメインで担当しています。このプロジェクトでは企画のチームや機械学習を担うチーム、場合によってはアプリケーションエンジニアやフロントエンドエンジニアの方たちともコミュニケーションを取る必要があります。
楽しい点としては、分析結果をもとに実施した施策が、レコメンド内容としてアプリに反映されることです。自分でLINEを使っているときにそのレコメンドを目にして、とても感動したのを覚えています。その反面、難易度が高い点としては複数のステークホルダーの意見を調整しつつプロジェクトを進めることですね。
このプロジェクトを通じて、より良い効果検証やA/Bテストのやり方を身につけることができました。また、Data Science室の輪読会や分析事例の共有会で学んだことを模倣して、分析に活かせるようになりました。

武田:私はLINE MUSICのProduct Planningチームで、KPI達成のために必要なユーザー行動の探索と、その行動をとってもらうための機能のスペック策定を行いました。企画のメンバーはもちろん、そのスペックが技術的に可能なのかをサーバーサイドエンジニアとも相談しつつ、プロジェクトを進めました。
楽しかった部分としては、活用できるデータ量が非常に膨大であることです。ユーザー体験の仮説を立てたうえで、それらのデータを活用して、詳細に検証できることがデータサイエンティストの仕事をするうえでありがたかったです。大変な部分としては、データが膨大であるために、きちんと仮説を立てて検証しなければ、余計な作業に時間がどんどん消費されてしまうことですね。
このプロジェクトでは、KPI達成のために分析サイクルをどのように回せばいいのかを学べましたし、問題解決能力が上がりました。それから、意思決定に結びつけるための分析能力や、他の方々に説明する力などを身につけられました。
「和気あいあいとしつつも真面目」な雰囲気の組織
――Data Science室の雰囲気について特徴を挙げてください。
栗本:Data Science室全体としては、和気あいあいとしつつも真面目な方が多いです。その中でも、私がいるAd Data Scienceチームはにぎやかな雰囲気があります。そして、Data Science室にはさまざまな領域に関心を持つ人たちが集まっています。たとえば、ベイズ統計が大好きな人もいれば、定性的な分析に興味のある人もいますね。総じて、学習意欲の高い人が多いです。
安藤:自然科学系の出身の人と社会科学系の出身の人が、まんべんなくいるのが良い点です。それに、博士号を取得している人も多数在籍していて、みなさん知識の専門性が高いですね。データサイエンティストごとに得意分野が違うため、事例の共有会などで自分の専門外の領域について知ることができるのは勉強になります。
松田:各領域の専門家がいるのは本当にその通りで、困ったときには必ず誰かが質問に答えてくれますね。それから、決してチームごとにコミュニケーションが遮断されておらず、Slackなどで気軽に他のチームの人に質問や雑談ができます。組織全体として仲はとても良いです。

武田:松田さんが述べた通り、Data Science室では誰かがSlackで質問すると、他の誰かが必ず答えてくれます。各チームの中では、確かに栗本さんが言ったようにAd Data ScienceチームやそれからOA Data Scienceチームがにぎやかな印象です。
――Data Science室は新卒の人たちにとって働きやすい環境ですか?
栗本:はい、そうですね。理由は、先ほどの話にもあったように他のメンバーに質問しやすいからです。加えて、自分がすごくいいなと思っているのは、マネージャーのみなさんがメンバーを支援する姿勢を非常に強く持っていることです。
安藤:年々、新卒が働きやすい環境になっていると思います。なぜなら、Data Science室は3年前から新卒を採用し始めたので、徐々にオンボーディングの体制などが整ってきたためです。これから、さらに良い環境になっていくはずです。
松田:間違いなく働きやすくて、まず分析周りの環境が整っているのが大きいです。LINE社内には大量のデータがあり、GPUなどの潤沢な計算機リソースも使えます。他にも、輪読会が頻繁に開催されたり業務に関する知識習得のための書籍を会社が購入してくれたりと、知識を身につけやすいです。
武田:働いている中で、不安や違和感などを覚えたことがありません。それは、上長や先輩からのサポートがあったのが大きいです。業務とは関係のない雑談も気軽にできて、「自分のことを受け入れてもらえている」という気持ちになれました。
データサイエンティストとしてのキャリアパス
――今後、データサイエンティストとしてどのようなキャリアを歩んでいきたいか目標を教えてください。
安藤:担当している分析業務は非常に楽しいので、この仕事に専念したいです。まだまだ分析者として成長できるはずですし、もっと仕事が楽しくなると思っています。ただ、これはキャリアの選択肢を狭めるという意味ではなく、今後自分がマネージャー業務を行いたい、行なった方が組織として望ましいと思ったら、そちらの仕事にも携わりたいと考えています。
栗本:短期的な目標としては、まず現在の担当業務で独り立ちしたいです。特に、プロダクトを改善する打ち手を分析結果から提案するといったことを、確度高くできるようになれたらと思っています。中長期的な目標は正直まだわからないですが、プロダクト全体の成長や改善に貢献でき、様々な関係者から頼りにしてもらえるような分析者になっていきたいですね。
松田:中長期的には、データサイエンティストとしてさらなるスキルアップに専念したいと考えています。データサイエンティストとして働くうえでは、さまざまなスキルが必要になると日々感じています。データサイエンス領域の知識やエンジニアリング力だけではなく、ビジネス力やプロジェクトをリードできるようなスキルも身につけていきたいです。
武田:今のところは、事業の意思決定に関わる分析を行うような、プレイヤーとしてのキャリアを歩んでいきたいと思っています。新卒でLINEに入社してから、これまでデータ分析によって事業部内の多くの意思決定に関わってきました。自分の責任や担当範囲が広がっていくごとに、より多くの分析手法やビジネス知識が求められるようになっています。より良い成果や分析を実現するために、しばらくはそれらの能力を高めていきたいです。
――Data Science室への参画を考えている新卒の方々にメッセージをお願いします。
安藤:LINEのデータサイエンティスト職の魅力は、自分の技術や知識をサービスを通じて社会に還元でき、その結果を身近に感じられることだと思います。個人的には、データ分析を通じて施策の実施やサービスの仕様変更といった意思決定に関わることができるのは、やりがいを感じます。自分のような心理学畑出身のデータサイエンティストもいるので、自然科学や社会科学といった分野を問わずに、さまざまな専門性を持った方に応募してほしいです。
栗本:もちろん組織に課題がないわけではありませんが、分析職としてのキャリアを始めるうえで、必要な要素はある程度揃っている職場だと思います。今後、どういったスキルや経験を得たいかを自分なりに整理してみて、LINEとマッチしそうだと感じたら応募していただけると嬉しいです。
松田:LINEはデータ分析環境が整っていたり、さまざまな領域のデータがあったり、データサイエンティストの人数も多かったりと、データサイエンティストとして非常にスキルアップしやすい会社だと思います。また、LINEでは情報系だけではなく物理や生物、心理学などさまざまなバックグラウンドのメンバーが活躍しています。ですので、分野を問わず色々な方に応募していただけると嬉しいです。
武田:LINEのData Science室は、自身のスキルを高めたい方にも、学んできた分析の知識を社会に適用したい方にも満足してもらえる環境だと思います。なかなか他の会社では、膨大なデータを自社プロダクトの改善や施策の実施に活かす経験はできないはずです。自身の分析スキルを活かす貴重な経験を得られるので、データサイエンティストとしてのキャリアを築いていこうと考えている方には、就職先の候補のひとつにしていただけるとありがたいです。
――みなさんの、さらなる活躍が楽しみです。ありがとうございました!
採用情報
LINE株式会社では一緒に働くエンジニアを募集しています! 今回のインタビューと関連する募集ポジションはこちらです。
新卒採用
- データサイエンティスト職選考スケジュール(詳細は上記ページをご覧ください)
- 第2ターム:締切日時:2022年11月28日(月)AM10:00
- 第5ターム:締切日時:2023年2月27日(月)AM10:00