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「サービスを改善し続ける姿勢を大切にしたい」LINEのスマホ銀行を開発するエンジニア2人が目指すもの

LINEで働くエンジニアに色々と話を聞いていく「LINE Engineer Insights」。LINEの技術組織で働く個々人に、何を重視して技術者としてのキャリアを歩んでいるのか、今LINEで何に取り組んでいるのか、今後実現していきたいことなどを聞いていきます。今回登場するのは、開業準備をしている「スマホ銀行」の開発に携わる2人です。

LINEでは金融領域での新たなチャレンジとして、みずほ銀行とともにLINEアプリ上ですべての金融銀行サービスが完結する「スマホ銀行」を、2022年度中に設立することを発表しました。多くの方々に安心してご利用いただけるように高い信頼性やセキュリティを備えつつも、手軽で使いやすいスマホベースのメインバンクサービスを目指して開発を進めています。

「スマホ銀行」の認証機能の開発を担当する、LINE Fukuokaの黎駿謙(レイ・シュンケン:Eric)と京都開発室の野田誠人、Fintech系サービスの開発に携わった理由や、エンジニアとして目指すビジョンについて聞きました。

(左) LINE FukuokaのEricさん (右) 京都開発室の野田さん

愛情を持ってサービスを育てられる会社で働きたかった

──まずは、野田さんがLINEに入社するまでの経歴を教えてください。

野田:私が最初に就職したのは、客先常駐のSES(System Engineering Service)をやっている会社でした。その後転職をし、友人が運営していた音楽教室で使われるシステムの開発に携わりました。音楽教室の退職後は関東で1年ほどフリーランスエンジニアとして働き、その後に京都へ引っ越してからSIerに入社してシステム開発に従事しました。その後、ふたたび音楽教室を運営している友人が声をかけてくれ、そちらを手伝った後に転職活動をしている中で出会ったのがLINEでした。

──転職活動ではどんな点を重視したのですか?

野田:私は前々職のSIerで働いていた頃、プロダクトを改善し続けられないことに不満を抱いていました。SIerは限られた予算と期間でクライアントの希望するシステムを作るのが仕事ですから、プロジェクト終了後に「あの機能は○○にしておけばよかった」と後悔する点が必ず出てきます。にもかかわらず、クライアント企業から予算が出なければコードを修正できません。そのことを非常に歯痒く感じており、せっかくエンジニアとして働くのであれば、自分たちで愛情を持ってサービスを育てられる会社に入りたいと考えていました。

それから、社会的意義のあるシステムを開発したいという希望もありました。自分の家族に対して「私はこういうシステムを開発して、世の中を良くしているんだよ」と胸を張って言える仕事がしたい。また、関東にいた頃のように満員電車に乗りたくなくて、自転車で通える範囲がいいとも思っていました。LINEは京都にもオフィスがあり、こうした要望のすべてにマッチしている会社でした。

人々のつながりを支えるサービスには大きな意義がある

──次にEricさんの経歴についても伺わせてください。

Eric:私は香港の出身です。学生時代から、オンラインゲームで遊ぶことやパソコンに触れることが好きでした。テクノロジーを学びたいと考えて大学に入学し、プログラミングに触れる過程で、ソフトウェアを開発する醍醐味を味わったんです。

プログラミングを学ぶなかで、少しでも早く開発の現場を体験したい気持ちが強くなり、自主的に大学を1年ほど休学しました。大学の講義は座学がメインですから、その勉強をしているだけではサービス開発の経験を積めないと考えたんです。

休学期間中は外資系企業でインターンとして働き、株取引のシステム開発を経験しました。エンジニアの仕事は本当に面白いなと実感しましたね。大学卒業後には晴れてその企業に就職し、同じチームでサーバーサイドの開発に従事しました。

その後に同社を退職して半年ほどフリーランスでエンジニアをしながら、自分はどのような会社で働き、何を開発したいのかを考え続けていました。すると、登録していた求人媒体からいくつかスカウトがあり、そのひとつが私の現在所属するLINE Fukuokaでした。

──働く会社を決めるうえで重視していたことを教えてください。

Eric:私の印象ですが、香港にはエンジニアリングを大切にする企業が少なくて、多くの企業はビジネスで成功することだけを最優先にしていました。私はテクノロジーが好きでエンジニアを尊重してくれる企業で働きたいと思っていましたが、なかなか意向に沿った会社に出会えなかったんです。しかしスカウトが来たことをきっかけに、海外で働く選択肢もあると気づきました。

LINEについて調べてみたところ、エンジニアリングをかなり大切にしている企業だとわかりました。それに、LINEが掲げる「CLOSING THE DISTANCE」というコンセプトにも共感できたんです。フリーランスエンジニア時代にふとしたきっかけで、今後会うことはないだろうと思っていた旧友と、SNSでつながりを取り戻せたことがありました。テクノロジーで人と人とのつながりを創出するのは、とても意義のあること。自分もそういった仕事ができたら楽しいだろうと思い、LINEに応募しました。

Fintechサービスの大変さと面白さ

──LINEにはさまざまなサービスがありますが、そのなかでもFintechのサービスに興味を持った理由を教えてください。

野田:LINEの採用面接でいくつか事業領域の候補を提示されたのですが、Fintech領域に興味があると答えたところ、「スマホ銀行」の開発チームに配属されました。

多くのエンジニアは、金融系のシステム開発は非常にレガシーなものという印象を抱いていると思います。分厚いテスト仕様書を見ながらひたすら手動でテストを実施するとか、はるか昔に書かれたコードをひたすらメンテナンスし続けるとか。モダンな開発とはほど遠いイメージかもしれません。私もかつてはそう思っていました。

しかし、ある銀行のアプリを使うようになってから、私のその印象は払拭されました。近年ではさまざまな金融機関が積極的に新しい技術を導入し、ユーザーにとって使い勝手の良いサービスを開発しています。今後、Fintech領域ではエンジニアの視点から見ても面白いサービスが登場してくるのではないかという期待を抱いていました。

実際に「スマホ銀行」の開発プロジェクトでは、自分自身が想像していた以上に新技術を積極的に取り入れています。法律などの規制もあり、開発途中のものの具体的な話はなかなかできないのですが。おそらく、技術を武器にして成長してきたLINEという会社がFintechのサービスを開発するからこそ、これまで構築されてきたLINEの文化が色濃く反映されているのだと思います。

──EricさんがFintechのサービス開発をしたいと思った経緯も教えてください。

Eric:私はLINE入社後、アルバイト求人情報サービス「LINEバイト」や単発雇用マッチングサービス「LINEスキマニ」などの開発に携わってきました。Fintech領域に興味を持ったのは、「スマホ銀行」の開発メンバーの社内公募があったことがきっかけです。

私のように海外から日本にやってきた人間にとって、日本の銀行で口座を開設するのは大変な作業です。日本の住所がなければ口座を開けなかったり、銀行の顧客情報登録システムが外国人の名前を想定していなかったり。他にも、必要な証明書類が足りなかったり、印鑑を忘れたりしたために、手続きができずに一日が無駄になってしまう経験もしました。

その大変さを知っている自分が開発に携わるのは、きっと意味のあることだと思い、公募に立候補しました。「スマホ銀行」はeKYCを用いて本人確認ができますし、いろんなことをスマホひとつで済ませるので、かなり便利になると思います。

メンバー同士がお互いに高め合う。「スマホ銀行」の開発体制 

──「スマホ銀行」の開発がどのような流れで進んでいるのかを教えてください。

Eric:機能は基本的に企画チームや業務チームといった、銀行業務を検討するチームが発案します。多くの場合は、まず企画チームが発案します。基本的な開発の流れは、通常のサービス開発とそれほど変わりません。

システムの設計、設計レビュー、実装と単体テスト、お互いの実装レビュー、結合テストなどが行われます。金融サービスは一般的なサービスよりも堅牢なセキュリティが求められるため、重要な設計では社内のセキュリティチームと相談する必要もありますね。

私たちの所属するチームは東京、京都、福岡という3拠点にメンバーがおり、オンラインで連携をとりながら作業を進めていきます。連携手段はチャットツールを用いることが多いですが、必要があればビデオ会議で画面を共有しながら議論します。現状は画面越しでしかメンバーと会ったことがないですが、コロナが落ち着いたらいつか直接会ってみたいですね。

──「スマホ銀行」の開発チームはどのような雰囲気や文化があると感じますか?

野田:働く個々人のバックグラウンドが多彩なので、同じコードや問題に向き合う場合でも、それぞれの視点が違うのがとても勉強になります。また、何かあったときに率先して動くメンバーも多いです。コードレビューでは修正すべき点を指摘するだけではなく、いい箇所には「いいね」と記述してくれるのが素晴らしいと思います。

Eric:よりよいものを作るために、意見と情報の共有を惜しまない雰囲気を感じました。それぞれのメンバーの過去の開発経験が異なっているため、長けている部分も違います。だからこそ、いい意味でお互いを補い合っています。

私の提案を取り入れてもらったこともありますし、私が担当している作業に助言をもらったこともあります。遠慮なく意見を言い合えるからこそ、お互いのスキルを高め合うことができます。しっかりしていますが、全体的に堅いイメージはありません。たまにみんなで業務外の雑談もするので、リラックスできる時間もあります。

──「スマホ銀行」の開発において求められるマインドがあれば教えてください。

野田:ユーザーのお金に関わる銀行というプロダクトだからこそ、保守的なマインドとユーザーの利便性のために新しいものを取り入れていく先進性の両方が求められると思います。保守的な部分に対しては「それがなぜ今でも必要なのか?」を、新しいものに対しては「それを取り入れて大丈夫なのか?」を考える視点が要求されます。

Eric:新しい知識を恐れずに学ぶことです。銀行の開発に必要な業務知識に限らず、日々進化しているテクノロジーをキャッチアップする必要もあります。たとえ、自分がそれほど詳しくない領域に触れた場合でも、避けるよりもチャレンジしてみる姿勢でやった方が楽しいですし、自分の成長にもつながります。私もまだ未熟で知らないことがたくさんありますが、知らないことに触れた際には自分なりに積極的に調べるようにしています。

エンジニアとして細部にまでこだわり抜きたい

──Fintechサービス開発のどのような点に面白さを感じていますか?

Eric:私や野田さんは「スマホ銀行」の認証機能の開発をしていますが、セキュリティは非常に奥が深い領域です。お金を扱っている以上、セキュリティを堅牢にしなければサービスが成り立ちません。かといってセキュリティをガチガチにしすぎると使い勝手が悪くなります。そのバランスを上手に取るのが、大変であり面白い部分でもあります。

野田:サービスにおいて認証は必ず使われる機能だからこそ、その設計がUXに直結します。ユーザーの多くはLINEというアプリに対して「手軽に使えて便利」という印象を持っています。だからこそ金融という領域を扱う場合でも、セキュリティを大切にしつつ、良い意味での手軽さをユーザーに提供していきたいです。また、「スマホ銀行」の開発に携わったことで、認証という領域を深く学ぶ機会になり、自分自身のエンジニアのキャリアにとってもプラスになりました。

──エンジニアとしてのモチベーションの源泉を教えてください。

Eric:私はエンジニアリングが持つ“謎解き”的な要素に魅力を感じています。何かの課題があり、解決のための方法を考えて、コードを書いてリリースして、誰かの役に立つ。その一連のプロセスで得られる達成感が、大きなモチベーションになっています。

野田:私は基本的にものを作るのが好きです。頭の中で考えたアイデアを実際に形にしていって、良いものができたときは楽しい。ソフトウェアエンジニアの仕事は、設備投資が少なくて済むことも魅力ですよね。パソコンさえあれば他には何もいりません。自分が考えたアイデアを実現するハードルが低いのに、それでいて幅広く表現できることが面白いと感じます。

──最後にエンジニアとして大切にしているポリシーや今後の目標を聞かせてください。

Eric:エンジニアとして何より大切にしているのは、自分が開発したプロダクトの品質向上を諦めないことです。「ここまでやったから、もういいだろう」とか「これ以上良くしてもどうせユーザーは気づかないだろう」と、妥協したくない。もっと良いクオリティにできると信じながら、コードと向き合い続けることが大事です。

それから業務においては、自分が担当する機能だけではなく、プロダクト全体に対しての責任感を持ち続けたいと思っています。いま開発している「スマホ銀行」は多くの方々の生活を支えるアプリになるはずですから、より良いシステムへと改善していきたいですね。

野田:サービスを育て続ける姿勢を常に持ちたいです。よく「神は細部に宿る」と言いますが、特定の処理にかかる時間を0.1秒縮めるとか、そういった部分にまでこだわりたい。「スマホ銀行」の開発でも、日々の業務に全力で向き合えていますし、エンジニアとして大きな満足感を覚えています。

本業以外でも、何か長く関わっていけるソフトウェアを開発できたらいいなと思っています。それは、自分が考えたプロダクトでもいいですし、OSSでもいい。ライフワークにできるシステム開発に携われたら、エンジニアとして幸せだなと思います。それから、「スマホ銀行」のプロジェクトで、認証・認可の領域は相当に面白いとわかってきたので、今後もより深く学び続けたいです。

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