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The Next Webカンファレンス登壇レポート「なぜメッセンジャーサービスでチャットボットを作るべきか?」

こんにちは。LINE開発1センターのテクニカルコンサルタントリード、そしてLINEのプロダクトマネージャーのJose Luisです。

5月18日にアムステルダムで開催されたThe Next Web(TNW)カンファレンスの招待を受け、エンゲージ・セッションに参加してきました。イベントの簡単な紹介とエンゲージ・セッションについて書きたいと思いますが、まずは私たちを招待して頂いたことにTNWにお礼を申し上げたいと思います。

オープニング

オープニング・イベントは素晴らしかったです。大抵のITイベントでは見られないような音楽とビジュアル効果溢れる演出がありました。この写真から会場の興奮が感じられますよね?

展示

展示会場には沢山の優れたアイディアを持ったスタートアップ企業の出展がありました。スポンサー企業はこれらスタートアップを支援し、また同時に投資機会も探っていました。このようなスタートアップを手助けする場を目にすることができてよかったです。日本でもより積極的にスタートアップ企業の支援に関わるところを是非見てみたいところです。

私のセッション

私がスピーカーとして参加したエンゲージ・セッションのトピックは、「なぜSNSでチャットボットを作るべきか?」でした。「エンゲージ・セッション」について、ご存知のない方に説明しますと、これはスピーカーが参加者と対話してセッショントピックに導く、オープニングセッションのようなものです。

お互いに自己紹介をした中で気がついた点がいくつかあります:

  • LINEを参加者達は知ってはいたが、使ったことがありませんでした。
  • 参加者達はビジネス系の方々でした。
  • ほとんどの参加者はアムステルダム外からカンファレンスのために来られておりました。

チャットボットについて

チャットボットとは何か?と問いかけたところ、参加者達は「チャットボットは人間の会話を真似ることができるもの」と理解していました。これは間違ってはいません。 技術的な観点で説明すると「チャットボットとは人間の会話をシミュレートすることができるプログラム」です。チャットボットというものは、実際にかなり以前から存在していました。見たことあるものでは、Windows XPでMicrosoft Excelを使用していた際に、イルカが飛び出してヘルプが必要かどうか尋ねるものがありました。もっと古いチャットボットで、私が知らないものもあるかもしれません。

では、チャットボットはどのようなメリットがあるのでしょうか?

チャットボットはコンピュータプログラムがベースとなっているため、人間が介在することなく応答することができます。チャットボットが替わりに応答します。例えば、ピザの注文で人間が対応することなく注文内容と配達場所の確認など、提供しているサービスに合うチャットボットのプログラムを組むことができます。 また現在はチャットボットをよりスマートにすることができる、人工知能(AI)サービスもあります。

チャットボットにはこのようなメリットがありますが、まだ人間を置き換えるまでに至っていません。参加者の一人が指摘していましたが、AIに教えるのは単純な作業ではありませんし、AIは全ての状況に対応することはできません。実際にAIサービスに付随しているハイテクツールを持ってもAIサービスに教えるのは易しいことではありませんし、またユーザーが何を依頼するのかを予測することはできません。そのため、AIサービスに教え続ける必要があり、これはかなりの作業量になります。幸いなことに、機械学習の手助けによりAIに教えるのはより簡単になってきています。将来、スタートアップ企業でもAIを活用しやすくなることを期待します。

どのようなサービスにチャットボットは合うか?

チャットボットに合う一般的なサービスの例として以下のものがあります:

  • 注文: ピザ、チケット、ECサイトなどの注文処理。
  • アシスタント: 旅行やサービス情報提供によるユーザーのヘルプ。
  • 検索: 画像の検索、旅行先や食事の検索。
  • サポート: 顧客へのカスタマーサービスの提供。LINEでは、ボットでは顧客の問い合わせに応えられない場合、アシスタントボットから人間のオペレーターに切り替えられるようにしています。

チャットボットとSNS

「なぜSNSでチャットボットを作るべきか?」というのが私のトピックでしたので、SNSに話題を移しました。メッセンジャーサービスであるLINEにおいてチャットボットを作る理由には以下のものがあります:

  • 大きなユーザープールを持っており、チャットボットに多くの利用者を見込める。
  • 提供しているサービスを手軽に宣伝できる。
  • 独自のウェブサイトを製作する必要がない。

多くのSNSではチャットボットAPIを提供しています。メッセンジャーサービスであるLINEもそのうちのひとつで、アジアにおいてはFacebook、Wechat、Kikに並ぶ大手です。どのサービスを利用すべきかと聞かれたら、迷わずにLINEとお答えしますが、どこでサービスを提供するかも考慮すべきだと思います。 もし日本やその他東南アジアの地域を考えている場合は、これら地域で強いユーザーベースがあるLINEを推奨します。更にLINEはチャットボットのユーザーベースを拡大するために企業向けにプロモーションを行っています。これら以外の地域では、Facebookが使いやすいと思います。

SNSやメッセンジャーサービスではチャットボットはまだ新しく、会社の製品の広告や新しいビジネスモデルを模索するという課題があります。しかし、チャットボットは遅かれ早かれ成熟し、多くのサービスにソリューションが生まれるでしょう。

なぜ企業はチャットボットを作るのでしょうか?まずひとつの理由は会社の製品の広告のためです。LINEでチャットボットを作った会社からの報告では、CTR(クリックスルー率)がその他の広告よりもかなり高く、より多くのユーザーが製品を閲覧しているそうです。つまり、チャットボットを使用することで会社の製品をマネタイズできる可能性が高いということです。SNSやメッセンジャーサービスでチャットボットを使用する他の理由としては、ひいき顧客を維持することと、カスタマーサポートを提供することです。業界は電話からチャットボットへシフトしています。

スタートアップ企業にとってみれば、会社のサービスの情報を拡散するに当たって広告を出すよりも、チャットボットを使用した方がより安価で済みます。

Q&A

参加者から頂いた質問の一部を下にご紹介します。

SNSやメッセンジャーサービスのプロバイダに対して企業からはどのような依頼がありますか?

LINEの場合のお話しかできませんが、ほとんどの会社はチャットボットと自社サービスの統合のやり方を教えてほしいという依頼をします。 チャットボットが新しいものですので、どのようなソリューションがベストなのか企業にとっても分からないのです。LINEはコンサルティングサービスも行っており、LINEのプラットフォーム上で顧客のサービスのチャットボットをどのようにして組み込むかアドバイスを提供しています。

AIがチャットボットを完全に制御するようになることはありますか?

はいともいいえとも言えます。何でもこなせるようにAIを開発するのは極めて難しいです。また、開発者自身が予期していなかった質問にも応えられるようにAIエージェントを教えなければいけません。もちろん、機械学習は進歩し続けており、将来AIを取り込むのがより容易になる可能性はありますが、AIが全ての質問に応えられるようにはなっていません。 現在、データとリソースのある会社はチャットボットにAIを活用しています。LINEではハイブリッドソリューションを提供しており、これによってAIエージェントがまず返答し、返答が不十分だとユーザーが思った場合、人間のオペレーターへ切り替えることを依頼することができるようになっています。

チャットボットはB2Bソリューションでも有効ですか?

チャットボットでどのようなソリューションを提供したいかにもよります。B2Bのチャットボットで、お店の在庫管理や当番管理表などを見たことがあります。LINEの業務はB2BよりもB2B2Cの比率が多いです。企業はLINEを使ってユーザーにカスタマーサービスを提供しています。

終わりに

Q&Aで他の参加者の声を聞く時間がもっとほしかったですが、全体的に他の方々の意見を聞く機会があってよかったです。今後もまたこのようなセッションにぜひ参加したいと思います。