LINEにおけるチャットボットのアジア展開

こんにちは。LINEプラットフォームのテクニカルコンサルタントのMark Serranoです。

10月10日にサンフランシスコで開催されたカンファレンス「Business of Bots」に招待され、スピーカーおよびパネリストとして参加してきました。このブログ記事では、カンファレンスでの体験とセッションで話した内容についてご紹介したいと思います。

カンファレンス

本カンファレンスはサウスサンフランシスコのSouth San Francisco Conference Centerで開催されました。ホテル業界から自動車業界まで、さらにはスポーツチーム運営企業といった、さまざまな企業から参加者が集まりました。参加者の誰もから、チャットボットについて学び、その活用方法を知ってビジネスに価値を付加しようという熱意が伝わってきました。各セッションの内容は、ボット作成のベストプラクティスから、企業におけるボット活用事例の突っ込んだケーススタディまで、多岐にわたるものでした。

登壇したセッション

私のセッションでは、LINEの主な市場である、日本、台湾、タイ、およびインドネシアにおける、ビジネス向けチャットボットの主なユースケースについてお話ししました。また、LINEの主要市場におけるチャットボットの将来についても概説しました。

日本

日本で人気のある事例としては、店舗の会員カードやポイントカードがあります。ポイントカードは日本で非常に普及しており、オンラインかオフラインかにかかわらず、多くの店舗で何らかのポイントカードシステムを導入しています。ほとんどの店舗がその店舗でしか利用できないポイントカードを採用しているため、顧客はポイントを貯めたい店舗それぞれのポイントカードを持つ必要があります。その一方で、大手衣料品店を含むいくつかの企業では、会員カードをLINE公式アカウントに組み込んでいただくことにより、顧客の利便性の向上を図られています。顧客は支払時に公式アカウントを見せるだけで済み、財布からポイントカードを探し出す手間がありません。

日本では顧客満足度の向上は非常に重要なので、顧客サポートがチャットボットの事例として人気があるのは当然といえます。通販サイトのLOHACO様では、ユーザーからの問い合わせに対応するため、顧客サービスボットの「マナミさん」の開発・運用にLINE カスタマーコネクトをご利用いただいています。AIエンジンでの対応が難しい質問は、ライブチャットで応対するサポート担当者に転送されます。マナミさんに対する顧客満足度スコアは90%ということです(動画「LINE カスタマーコネクト × LOHACO」を参照)。

最も有名なチャットボットの成功事例の1つに、大手宅配業者のヤマト運輸様のケースが挙げられます。ヤマト運輸様がチャットボットを導入されたのは「再配達問題」を解決するためでした。日本では、受取人の不在時に荷物が配達されると、配送人は荷物を玄関前に放置せず、再配達の依頼を求める不在票を郵便箱に残します。受取人が再配達を依頼しないと、配送人は配達のために1週間毎日受取人を訪ねることになります。ヤマト運輸様のボットのユーザーは、荷物の配達前にボットから通知を受け取り、必要に応じてボット経由で配達前に荷物を受け取る場所や時間を変更したり、再配達を依頼したりできます。ボット導入により、ヤマト運輸様は再配達の件数を減らすことができました。LINEを通じて再配達などを依頼する顧客が、60%も増加したのです(動画「 【公式】LINE×ヤマト運輸 |LINE Business Stories」を参照)。

台湾

台湾では、店舗の会員カードに加えて、銀行業でもチャットボットの主要な事例を見ることができます。台湾のいくつかの大手銀行では、口座残高の確認や請求書の支払などの一般的なトランザクションを円滑に行うために、チャットボットを導入いただいています。

ある大手銀行では、住宅ローンの申し込みを支援するチャットボットサービスを提供いただいています。このボットは、AIエンジンを使って住宅ローンの手続きに関する質問に答えます。例えば、ユーザーが「いくら借りられますか」と質問すると、AIエンジンが、ユーザーの年齢、収入、ローンの目的などの情報を質問し、それらの情報を元に複数の種類のローンを提案します。その後で、ユーザーはチャットボットを介して申し込み手続きを始めることができます。

別の大手銀行ではLINE Taiwanと提携して、LINE Payの機能を備えたクレジットカードを発行いただいています。こちらの銀行ではクレジットカード用のカスタマーサービスを提供するチャットボットを開発されましたが、ユーザーはこのチャットボットを介して、クレジットカードの申し込みまで行うことができます。このサービスの利便性は非常に高く、ボットを介してLINE Pay機能付きのクレジットカードを申し込めるばかりか、必要事項を直接LINEアプリで送信できます。その結果、こちらの銀行ではこの種のクレジットカードの発行枚数を大きく伸ばすことに成功され、2017年9月末の段階で75万枚のクレジットカードが発行されました。

タイ

銀行業の事例はタイでも際立ったものがあり、Citibank様やSCB様のような大手銀行がチャットボットを介してサービスを提供されています。また、他の種類のボットにも人気があります。飲食店評価サイトのWongnai様では、ユーザーの現在地から飲食店を検索するチャットボットをご利用されています。旅行会社のエクスペディア様も、LINEアプリを介して航空券とホテルを検索できるチャットボットをご提供されています。

タイでの成功事例として特に強調したいのは、LINE FINANCEのケースです。LINE FINANCEは、株式資産の情報を取得したり株式を取引したりするためのチャットボットですが、金を購入することもできます(金は株式市場の変動やインフレに対する防衛策になるため、タイでは貯蓄方法として人気があります)。通常であれば、販売店に行かなければ金は購入できず、最低購入価格も5000バーツ(約1万7000円)です。LINE ThailandはLINE FINANCEの金購入機能を開発してタイの代表的な金販売店と提携し、LINE FINANCEボットで1000バーツ(約3500円)から金を取引できるようにしました。金購入の敷居が下がったため、LINE Thailandおよび提携販売店で取引数を増やすことができました。

インドネシア

インドネシアでは、銀行業、オンライン予約、および電子商取引でよくチャットボットをご利用いただいています。タイや台湾と異なり、インドネシアの銀行で通常利用していただいているチャットボットでは、口座残高の確認などの読み取りトランザクションのみが可能です。政府による規制があり、顧客の残高を変更するようなトランザクションをボットに実行させるのが難しいからです。

インドネシアで評判のボットとしては、コンシェルジュボットのBang Joniがあります。ユーザーはBang Joniを介して、家庭の電気代に充当できるトークンや「プルサ」という通話クレジットを購入したり、Uberに配車リクエストをしたり、航空券や列車の乗車券を購入したりできます。

また、インドネシアで最も人気があるボットの1つに、AI搭載のバーチャルな友だちボットであるJemmaがあります。Jemmaはユーザーに話しかけ、得られたユーザー情報に基づいて、カスタマイズされた星占いやアドバイス、お礼を返します。Jemmaからのお礼は何かが無料でもらえるクーポンであることが多く、例えばバレンタインデーには、付き合っている人がいると入力したユーザーにアイスクリームの無料クーポンが配布されました。140万人のLINEユーザーが、Jemmaを友だち登録しています。

LINEの主要市場におけるチャットボットの現在と未来

LINEの主要市場においてチャットボットは成功を収めてきましたが、ボットの設計と会話体験にはなお改善の余地があります。ここまで述べてきた成功事例の大半で、ボットはAIまたは自然言語処理をせず、単純なコマンドやUIボタンに応答するに過ぎません。対象ユーザーに役立つ機能を提供できていれば、チャットボットはAIなしでも多くのフォロワーを得られますが、その結果、開発者たちは、AIに時間と労力をかけるだけの値打ちがあると考えていません。

AI以外の領域でも、多くのボットに改善の必要があります。ユーザーが楽しく話せる個性を作り込んだり、会話が行き詰まったときに正しい方向に導いたりする機能を持つボットは多くありません。ユーザーがボットに理解できないことを言ったとき、たいていのボットは「理解できませんでした」と返して会話を終了します。結局のところ、ボットはまだまだボット以上のものではないのです。

機能のみに焦点を当て、会話体験に配慮しないチャットボットでも、新し物好きの注目を集めるだけなら十分です。しかし、チャットボットに対してどっちつかずでいるユーザーを振り向かせるには、より自然な会話体験を創造する必要があります。日本で私が意見を交換した多くのユーザーは、チャットボットは企業が顧客に情報を伝達するための一方的な方法だと考えており、ボットと対話しようとさえしません。この思い込みは、日本では多くのチャットボットが事実そのように使われていることから生じています。より多くのボット開発者が中核的な機能に加えて会話体験に注力するようになり、日本語やインドネシア語といったアジア圏の言語の処理が向上するにつれ、ユーザーはチャットボットと対話し、活用し、その価値を理解するようになるでしょう。

パネルディスカッション

私単独のセッション以外に、Slack、Microsoft、Kik、およびGoogleから参加した代表者とのパネルディスカッションに招かれました。チャットボット分野の主要企業からの登壇者たちと場を共有できて、とても光栄でした。参加者から寄せられた質問は幅広く、プラットフォームに応じたチャットボットの重要性、効果的なチャットボットの開発のヒントから、各パネリストお気に入りのチャットボットについてまで、多岐にわたりました。アメリカのボット開発者の抱えるさまざまな疑問に耳を傾け、それらに対して自分の見方を述べ、他のパネリストの観点を知るという、意義深い体験ができました。

このような素晴らしいイベントを主催し、講演の機会をくださったBusiness of Botsチームに、厚くお礼申し上げます。

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