LeanやAgileをベースに組織を横断的に支援する「Lean & Agileチーム」はどんな活動をしているのか

LINEで働くエンジニアtokuhiromが、同じくLINEで働くエンジニアにいろいろと話を聞いていく連載「LINE Engineer Insights」。第11弾はLean & Agileチームの鎌田正浩さん。Lean & Agileチームではどんな業務があり、どんなやりがい、面白さがあるのか。またどんな人材が求められているのかなどについて話を聞きました。

ざっくり言うと

  • Lean & AgileチームはCTO直下の全社組織で、LeanやAgileの価値観や考え方をベースにした、チームコーチング、トレーニング、社内コミュニティの育成という業務がある
  • さまざまなチームと関わり、その組織の課題発見やその解消へのアプローチ、そして強みを伸ばしていくことなどをチームのリーダーやメンバーとともに行なっていくことが面白さ
  • エンジニアリングはもちろんデザインやプロダクトマネジメントなどの専門領域で、主体的に問題解決をリードしてきた人材を求めている

Lean & Agileチームのミッション

▲Lean & Agileチーム 鎌田正浩さん

―― tokuhirom:まずはLean & Agileチームという組織の概要と鎌田さんが現在携わっている仕事について教えてください。

―― 鎌田:今年4月にLINEに入社して、Lean & Agileチームに所属しています。Lean & Agile TeamはLeanやAgileの価値観や考え方をベースにして、プロダクトを作る組織をよりコラボレーティブで効果的にすることをミッションにしたCTO直下の全社組織です。業務は大きくチームコーチング、トレーニング、社内コミュニティの育成です。
私のメインの業務はData Science and Engineeringセンターの中で、LINE全社でのデータ利活用を推進していくためのチームの支援です。

―― tokuhirom:具体的にはどんな業務なんですか?

―― 鎌田:現在はデータ利活用のための体制や仕組みについての検討をチームで行っています。
チームに期待されていることや現状をヒアリングしながら、どういう体制を作っていくといいか、その体制を作るにあたりどのように進めていくとより効果的かなど、認識を合わせるためのイメージ図を作ったりしながら進めています。

―― tokuhirom:チームの外から関わりつつ、まとめていくということですね。そのほかにも担当していることはありますか?

―― 鎌田:Data ScienceチームやMachine Learningチームと共に、まずはマネージャーの方の視点で改善したいことの発見や定義、その解決のための方法の提案や支援を行っています。課題や目的はチームによって異なりますが、例えばData Scienceチームは、チームのミッションを改めて定義するタイミングでしたので、そのミッションのチーム浸透のための施策の支援などをしています。

―― tokuhirom:いずれかのプロジェクトのマネジメントをするというより、全体的なプロセスを改善することにコミットする仕事ということですね。

―― 鎌田:私たちのチームは4人メンバーがいるのですが、それぞれが異なるプロダクトを作るチームに所属して業務に当たっています。その所属するチームによって携わる仕事内容が異なります。
アジャイル開発の支援、振り返りをチームでうまくやるためのファシリテーション、LeanやAgileに関わるトレーニングやワークショップの実施、チーム同士が相互に経験やノウハウを交換するための社内コミュニティ活動などが私たちの業務です。

―― tokuhirom:他のメンバーはどのようなプロダクトに入っているんですか?

―― 鎌田:メンバーはLINE NEWSやLINE占い、LINEアンケート、LINEスタンプ関連のプロダクトチームなど、さまざまなプロダクトやチームに入っています。

アジャイル開発に携わることになったきっかけは?

―― tokuhirom:どういった経緯で現在の仕事をしようと思ったのでしょうか。

―― 鎌田:Lean & Agileチームの前身となるチームが発足したのは2018年7月で、その数ヶ月後にはじめて出された採用募集を見て応募しました。当時はハードウェアベンチャーのVPoE(VP of Engineering)として、組織や開発をどのように改善し、生産性を最大化/安定化できるのか検討、実施する立場でした。また、社外のチームに対してもコンサルとして関わったりするなかで、きっかけや仕組みによってチームが自律的になっていったり、カイゼンを継続的に行うことで成果を出していくのを見て、もっといろんなケースの知見や手段を増やしながら、この仕事のおもしろさを突き詰めていきたいという気持ちを持つようになっていました。
その中で出会ったのがLean & Agileチームの募集要項でした。募集職種名は「アジャイルコーチ」で、社内の様々なプロダクトを企画・開発・運営するチームにおいて、役割間コラボレーションの促進や、プロダクト開発プロセスをより効果的にするための支援をすると書かれていました。募集要項のなかでも「特定の方法論にこだわらず」という部分が自分がチームを支援をするときに大切にしていることと一致していたのと、一つの会社の中で多くのチームと働ける点をとても魅力に感じて今のチームにジョインすることに決めました。

―― tokuhirom:そうなんですね。以前、技術書も執筆されたと聞きました。

―― 鎌田:Pythonの入門者向けの本です。2016年3月に出版して、その後 韓国と台湾でも翻訳してもらって販売されています。

―― tokuhirom:ということは、2016年当時はプログラミングもしていたんですか?

―― 鎌田:出版が2016年なので、本の執筆をしていたのは2015年頃です。当時はメガベンチャーで、自社SNSのユーザーの投稿を監査するシステムを作るチームに所属していました。そこで画像の監査用のフィルターをPythonで書いていました。会社に出版の話がきて、そのうちの1つのテーマがPythonだったので、当時Pythonを書いていた私が担当したという感じです。2016年は別の会社にうつり、PHPとかRubyでWeb アプリケーションを書いていました。

―― tokuhirom:新卒ではメーカーに就職したんですね。

―― 鎌田:新卒だったのであまり良くわからず、「ものづくりと言えばメーカーだ」と思って大手メーカーのグループ会社に入社しました。会社の仕事内容に「ミサイル防衛システム」や「イージス艦のレーダー」という文字があり、それに心惹かれて入ったのですが、蓋を開けてみたらプロジェクタ開発の部署に配属でした。そこではDelphiでWindowsのアプリケーションをかいたり、C言語で組み込みシステムをかいたり、新卒的な雑用などをいろいろやりました。その後、先ほど話したネットベンチャー、さらに教育系のベンチャーのマネージャー職を経て、前職のVRのハードウェアのベンチャーに入りました。

―― tokuhirom:前職の従業員人数はどのくらいだったのですか?

―― 鎌田:最も多い時期で35人くらいです。CTOがオーストラリア人だったこともあり、エンジニア、リサーチャーのほとんどが外国籍のメンバーの会社で、いままでの会社と違う文化やルールがあっておもしろかったです。

LINEに入社して、ギャップを感じたことはあった?

―― tokuhirom:そうした人数が少ない会社からLINEに入って、入社前にイメージしていたこととのギャップはありませんか?

―― 鎌田:入社するまでに、時間をとっていただいて気になる部分に関しては聞くことができたので、ギャップはありませんでした。ただ、久しぶりに大きな企業なので「規模のある会社のパワーはすごい」と改めて実感しているところです。これまで経験してきたベンチャーでは様々なリソースも含めた制限があり、取れる選択肢の数は大企業と比べると少なかったと思います。
他には、深い経験や知識を持つスペシャリストの方の多さに、大企業の力を感じています。逆に、大変さというか違いでいうと、社員数が多いので、職種によるものもありますが、はじめましてから入る機会が多いですね。私はこんな事をしてきて、こういうことができますという最初の挨拶から始めることが多いです。

―― tokuhirom:たしかに(笑)。僕も同じミーティングに出ている人のなかで、最後まで誰なのかわからない人がいることがありますね。
鎌田さんがメインで担当している、全社のデータ利活用を推進するミッションを持ったチームは、いろんな部署からメンバーが集まっていると思います。そういうチームの支援で大変なことはありますか。

―― 鎌田:そうですね、チームは明確な目的、ミッションを持って組成されていますが、なぜそれをやる必要があるのかという今までの経緯や現状の課題感のキャッチアップも大切です。また、状況に応じてミッションのアップデートが必要になってくることもあるので、背景も含めてよく理解しておくのが、大変ですが重要だと感じています。あとは特定のチームに限らないことですが、まだ入社して日が浅いので、どの人がどういう専門性を持っているのか、その人の所属の組織の役割が何かなどの把握に少し時間がかかることもあります。

―― tokuhirom:話をまとめるのが大変そうですね。

―― 鎌田:やはり一発で全員が合意にいたるようなアイディアをひらめくようなことはほぼ無くて、イラストや図なども使いつつ、叩きになる素案をとにかくたくさん作って認識を合わせながら進めています。規模が大きいプロジェクトだとゴールが遠くて大変ですが、小さくフェーズを切りながら少しずつでも前に進めていくのが大事だなと考えています。全社の取り組みも、まずはカンパニーやサービスなどの単位から始めていっています。

Lean & Agileチームのアジャイルコーチとしてやりたいこと

―― tokuhirom:Lean & Agileチームでの仕事の割り振りは、本人の希望などもあるのですか?

―― 鎌田:はい、本人の希望や専門性のバックグラウンド、あとはLean & Agileチームとしての戦略で決まっていきます。

―― tokuhirom:今後は事業よりのチームの支援をやっていきたいという思いはありますか?

―― 鎌田:そうですね、事業よりかどうかという軸ではないですが、ほんとに多くのサービス、チーム、人がいる会社なので、多くの人に良い影響を、手段を問わずこれからも提供できると幸せだなと思っています。

―― tokuhirom:エンジニアからキャリアがスタートし、マネジメント、VPoEを経て、今はLean & Agileチームのアジャイルコーチとして活動しています。今後、やっていきたいことがあれば教えてください。

―― 鎌田:私は強くマネジメントを志向してきたというわけではありません。初めてスタートアップの小さなチームに入った時、チームの成果の最大化に必要なことを、まわりを見渡して私がやった方がいいことを積極的にやっているうちにマネジメントの役割が強くなっていきました。
チームの成果が最大化できることや良いプロダクトを作ることに貢献できれば、役割にはこだわっていません。例えばチームの企画からリリースまでの工程が短縮できて、今までの90%の時間で同じ成果を出せるようになったら最高ですよね。浮いた10%の時間は何に使ってもポジティブな効果があると思っていて、サービスのクオリティを上げること、チームの学習に使うこと、開発環境の整備に使うこと、次の新しい機能をつくること、いずれにしても、本人はもちろん、ユーザーの方や会社にとってもいいことです。そういうことをやっていきたいです。将来、こうなりたいという役職はありませんが、より良い影響をより多くの人に与えられるような存在になりたいと思っています。

―― tokuhirom:エンジニアの中には、マネジメントの時間が増え、手を動かすことが減ると仕事した感が薄れるという人もいます。そういう思いを抱くことはなかったのですか。

―― 鎌田:たしかに私もマネージャーをする前は、エンジニアとして手をずっと動かしていたいなと思っていました。すごいエンジニアの名前は知ってたけど、すごいエンジニアマネージャーの名前とかは知らなかったですしね。ただ、私の場合はチームの一員として自分が何をするのが、目的のために最適なのかを考えたときに、コードを書く以外のことをしたほうがチームにとっても会社にとっても役に立てるなというところからのスタートでした。仕事した感が薄れるというのは私も理解できて、コードを書いてコミットしてデプロイすると反映される、というスピードがあるものはマネジメントには少ないからかなと思います。
よく言われる、エンジニアとしてフルで働いている時間が少なくなることに焦燥感を覚えるという気持ちもよくわかります。敬遠されがちなのは、マネジメントという言葉から人の管理のイメージが強いのも一因だと思いますが、マネージャーの仕事は、「良いプロダクトをつくるために必要なことをする」と定義することも出来ると思っています。自分より年上のエンジニアよりも良いコードを書いたり、年下のエンジニアの書くコードに圧倒されたりする仕事だからこそ、コードを書いている時間にとらわれ過ぎず、マネージャーの仕事を捉えてやってみることで得られるものはあるというのが自分の実感です。LINEではマネジメントをやった後再びコードを書くエンジニアにというキャリアパスもありますしね。

―― tokuhirom:先ほど、より多くの人たちに影響を与える存在になりたいと言っていましたよね。チームのマネージャーになるより、Lean & Agileチームで流動的にチームに関わり、そのチームに影響を与えることができる今の仕事は面白いんじゃないですか。

―― 鎌田:楽しいです。いろんなチームと一緒に仕事できるのがこの仕事の醍醐味です。作っているモノの違いもありますし、チーム自体のフェーズも異なります。もちろんメンバーも違う。いろんな要素が違っていることによって、課題をテキストにおこしたものが一緒だとしても、チームとしての取り組む優先度や、メンバーの考え方なども異なるので、当然、最適なアプローチの仕方も違ってきます。
同じ事の繰り返しではなく、とにかくいろんなケースに対して、マネージャーやメンバーの方とアプローチを一緒に考えて試していく。そこがやりがいであり、面白いところです。

主体的に問題解決をリードしてきた人に来てほしい

―― tokuhirom:どんな人と一緒に働きたいですか。こういう人に来てほしいということがあれば教えてください。

―― 鎌田:Lean & Agileチームでもよく話をしているのですが、さまざまなチームと関わって仕事をしていくときに、一番良くないのが、正論だけをぶつけてしまうこと。チームのマネージャーをしていると、わかっているけど、今できないこととかたくさんありますよね。そういった事を経験していたり、実際に問題解決をしていくなかでの壁を一つずつ越えてきた経験が活きる仕事だと思っています。
チームへの傾聴や理解、チームと一緒に壁を越えていく考え方が出来る人と一緒に働けるといいなと考えています。

―― tokuhirom:エンジニアの採用だとコーディングスキルやリーダー経験などをみるのですが、Lean & Agileチームではどういう経験やスキルをチェックするのですか。面接が難しそうですね。

―― 鎌田:スクラムマスターやアジャイルコーチという職種は他の会社でもありますが、その立場での経験よりも、チームをどのようにリードしてきたか、どういう問題を実際に解消してきたかという経験を重視して判断しています。

―― tokuhirom:認定スクラムマスターの資格を持っている人って意外にエンジニアに多いですよね。そういう資格を優先するわけではないのですね。

―― 鎌田:そうですね、私も入社時には認定スクラムマスターの資格は持っていませんでした。入社後に取得したので合格したばかりです。他の資格同様、スタートラインに立ったというひとつの証明ではありますが、資格の有無は重視していません。

―― tokuhirom:Lean & Agileチームのメンバーはみなさん、異なる支援先に入っているのでなかなか顔を合わせる機会がないのかなと思うのですが。コミュニケーションはどうされていますか。

―― 鎌田:たしかに全員が席にそろっているタイミングはあまりないですが、必要なときにzoomを使って、短い時間で話したりしています。一応定例として毎週お互いの仕事の状況の共有をする会などもありますが、その時間よりも、それぞれが本や勉強会などでインプットした内容をシェアする会や、ランチなどで雑談する時間などをしっかり確保するようにしています。アジャイルコーチが一つの会社の中にチームとして存在する会社って、私のまわりではほとんどなくて、コーチとしてお互いのフィードバックや相談ができるのがかなり良いと感じています。

―― tokuhirom:Lean & Agileチームで働いてみたいと思っているエンジニアに対して、アドバイスをお願いします。

―― 鎌田:1つのチームでうまくいった方法を他のチームにそのまま適用しても上手くいかないことがあります。それぞれのチームにとって何が必要かをチームとコミュニケーションを取りながら実行して、チームがより大きい成果を出せるように、自分の知識と経験をフルにつかって支援する。それがLean & Agileチームでの仕事の面白さです。いろいろなことに興味があり、いろいろなチームの人たちと仕事をしてみたいという人、ぜひ、私たちの仲間になっていただければと思います。

―― tokuhirom:最後に1つ自分の興味から質問です。よく知らないメンバーとの仕事を雰囲気良く始めるためにやっていること、コツなどがあれば教えてください。

―― 鎌田:プロジェクトの目的をお互いに理解し、それを握ることが最初に重要だと考えています。

目的の認識を揃えることができれば、方法は擦り合わせていけます。お金などのコストという基準や、今はいいけど後で困るといった時間軸の話、やりたい/やりたくないという感情まで、いろいろな受け入れ条件があると思います。そのときにいろいろな選択肢を見ながら、お互いが目的のためにベストを尽くそうとしている雰囲気は大切かなと感じています。

―― tokuhirom:なるほど。特定のメソッドにこだわるのではなくて、いろんな方法を手元に揃えておいてその時々に応じて出すということですね。必殺技はやっぱりないのか(笑)。

―― 鎌田:ここでも銀の弾丸はないという話になっちゃいますね (笑)

―― tokuhirom:そうですね。ありがとうございました。