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LINE Fukuokaデータ活用の裏話。500名にサービス運営指標を提供し続けるために必要な役割と組織体制

LINE株式会社およびヤフー株式会社は、2022年11月17日・18日の2日間にわたり、技術カンファレンス「Tech-Verse 2022」をオンライン(ライブストリーミング形式)にて開催しました。特別連載企画「Tech-Verse 2022 アフターインタビュー」では、発表内容をさらに深掘りし、発表で触れられなかった内容や裏話について登壇者たちにインタビューします。今回の対象セッションは「500名にサービス運営指標を提供し続けるために必要な役割と組織体制」です。 

LINE FukuokaはLINEの日本国内第二拠点として、LINEサービスの運営に関する幅広い業務を担っています。カスタマーケアやモニタリング、審査といった運営業務をデータドリブンに行うためのさまざまな取り組みをしてきました。そのなかでも、データ分析において必要な役割を定義して複数部署で分担する体制を構築した点と、プロジェクト全体の情報セキュリティ対応を設計した点は、特に注力したポイントです。 

スモールスタートで始まったこのプロジェクトは、2年半でダッシュボードのユーザー数が500名を超える規模にまで成長しました。今回はセッションの発表内容についての秘話を、LINE Fukuoka Data LabsのData Engineering & Solution Teamに所属するSolution Architectの原山功也にインタビューしました。 

「9つの役割」を分割・定義した経緯 

――Data Engineering & Solution Teamの担う役割を教えてください。 

Data Engineering & Solution Teamはその名前が示す通り、データエンジニアリングとデータソリューションの役割を担っています。データエンジニアリングは、今回の「Tech-Verse 2022」で発表したVIIMプロジェクトのように、データ基盤を作ったり基盤の上でデータの集計・加工処理を実装したりといった仕事です。 

データソリューションは、データ活用のプランニングや推進をする仕事です。データ活用のニーズを持つ人を対象としてヒアリングを行い、要望をふまえて方針を提案し、合意を得られたらプロジェクトを推進します。 

私はデータソリューション寄りの仕事をしていて、カスタマーケアやモニタリング、審査といったLINE Fukuoka内のサービス運営業務のデータ活用方法を日々考えています。 

――今回のインタビューではセッションの発表内容をふまえ、その裏話を伺います。セッション内では「データ活用プロジェクトを推進するうえで、9つの役割が必要であること。そして、役割に基づいたチーム編成をすることで、プロジェクトのスケール上の課題を解決したこと」について解説されていました。前提として、どのような指標や考え方に基づいて「9つの役割」を分割・定義したのでしょうか? 

この役割の分割方法は、私たちが一から考えたものではありませんでした。データ分析関連の業界では、数年前から「データ活用を推進するための組織体制」というトピックが盛り上がっています。そうしたトピックでは一般論として、データマネージャーやデータサイエンティスト、データプラットフォームエンジニアなどの職種やチームが組織内に必要であると謳われることが多いです。 

しかし、LINE Fukuokaにはそうした役割を担える人材がそれほどたくさんいるわけではないため、世間で提唱されている「データ活用に必要な職種」をそのまま踏襲して人を集めるのは困難だろうと考えました。 

そこで、「データ活用に必要な職種」という概念をさらに抽象化し、「データ活用に必要な“役割”」が何なのかを突き詰めて考えました。その結果、職種ではなくセッションで発表した「9つの役割」を分割・定義し、人員を配置していくという方法を思いつきました。 

LINE Fukuokaをよりデータドリブンにしていく 

――今回のVIIMプロジェクトでは、部署横断のプロジェクトチームをゼロイチで組成されました。組織立ち上げにおいて大変だったことがあれば教えてください。 

プロジェクト発足の経緯としては、LINE Fukuoka内のデータの可視化に課題感を持っていたValue Management室を中心に、Data LabsやIT推進室、Global Operationチームが集まっていった流れです。 

実を言うと、立ち上げ自体はそれほど難しくなかったと思います。これらの4部署は、いずれも社内の業務改善をミッションとしており、アプローチが異なるだけで目指すゴールは同じです。そのため、VIIMプロジェクトのコンセプトについてはすぐに合意が得られました。 

LINE Fukuokaの企業文化として、会社のことが好きな人が多いですし、業務をより良くしていこうという意識が非常に高いです。チャレンジに対して前向きな姿勢もあります。だからこそ、こうしたプロジェクト推進がうまくいった側面はあると思います。 

――VIIMプロジェクトによって社内のデータ活用が進んだことで、事業にはどのようなプラスの影響が出ていると思われますか? 

もともとは、各部署が独自の方法や考え方、ツールを用いて、データの可視化や分析をしていました。ですが、観点の抜け漏れがあったり、部署間の横並び比較が難しかったりという課題がありました。VIIMプロジェクトによってデータを一元管理し、各部署の情報を横並び比較できるようにダッシュボードを設計したため、標準化した形でのデータ活用が可能になりました。 

また、「ダッシュボードを作ったはいいものの、その後使われなくなる」という事態を防ぐために、センターレビューという取り組みも行っています。LINE Fukuoka内は大きな組織から「センター→室→チーム」という階層構造になっているのですが、定期的にセンターが統括する各部署のKPIレポートなどを確認して、データに基づいた業務改善のPDCAサイクルを回しています。この取り組みはValue Management室が主体となって企画と実行支援を行なっております。 

――セッション内では今後の展望として「VIIMプロジェクトで構築したデータ基盤やプロジェクトチーム、社内コネクションをさらに有効活用して、LINE Fukuokaをよりデータドリブンにしていきたい」というお話がありました。今後のマイルストーンや構想などはありますか? 

まずは、データ活用の対象業務を拡大したいです。現在、サービス運営業務はほぼカバーできている状況ですが、今後は営業系やコーポレート系の業務にも、その適用範囲を広げたいと考えています。他にも、データ基盤に各種のデータが集まっている状況ですので、これらのデータの2次利用をしたいです。 

2次利用の例としては、今回のプロジェクトによってデータを自動収集するシステムが構築できたため、過去のデータをダッシュボーディングするだけではなく、将来の予測値もシステムで自動的に出力できるようにしたいです。実は既に予測の自動化の導入事例はありまして、いくつかの部署に予測結果を提供しています。 

そして、これらの施策を実施するためには、データガバナンスがより大事になってきます。そのため、セッション内でも述べた通りデータガバナンスの専門部署を立ち上げることは、プロジェクトの提供価値をさらに向上させるうえで必須だと考えています。 

最適なソリューションを提案できる人になりたい 

――Data Engineering & Solution Teamにいるからこそ経験できたことはありますか? 

LINE Fukuokaはカスタマーケアや、審査、モニタリングのようなサービス運営系の仕事が多いので、そうした性質の業務に携われるのはまずポイントだと思います。また、Data Engineering & Solution TeamはLINE Fukuoka内のデータエンジニアリングとデータソリューションを扱う全社横断的な組織であるため、社内のさまざまな部門の人たちと一緒に働けることも特徴です。 

Data Engineering & Solution Teamには、技術を大切にする文化もあります。「最近はこういった技術が登場しているので、試験的に導入してみましょう」とか「開発プロセスの○○を改善していきましょう」といったことが、メンバーから自発的に提案されますし、その意見を受け入れていく文化もあります。より良い開発プロセスを目指して、メンバーが一丸となって改善に取り組んでいます。 

――最後に、原山さんの今後の目標を教えてください。 

「Tech-Verse 2022」のプロフィールに、自分の職種を“Solution Architect”と書きました。私はこの職種の役割を「データ活用のニーズがあった際に、最適なシステム設計や分析計画などをソリューションとして提供できる人」と認識しています。 

自分は今後、この役割をさらに担えるような人間になっていきたいです。VIIMプロジェクトをはじめとした、既存のプロジェクトをより良くしていくだけでなく、新規のプロジェクトの立ち上げも行って、経験とスキルを向上させていきたいです。 

――原山さんがデータ活用の専門家としてさらに活躍されるのを楽しみにしています。今回はありがとうございました。