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自分の理想のリモートワークを福岡で実践するiOSエンジニア 秋勇紀。社外へのアウトプットで得られたもの

LINEで働くエンジニアに色々と話を聞いていく「LINE Engineer Insights」。LINEの技術組織で働く個々人に、何を重視して技術者としてのキャリアを歩んでいるのか、今LINEで何に取り組んでいるのか、今後実現していきたいことなどを聞いていきます。

今回登場するのは、LINEのモバイルエクスペリエンス開発室のDeveloper Experienceチームで働く秋勇紀。LINE Fukuokaに新卒で入社し、「LINEスタンプメーカー」の開発などに携わった後、福岡在住のままLINEへ転籍。カンファレンスや勉強会への登壇など、エンジニアとしての外部交流活動にも積極的です。本インタビューでは転籍を含むキャリア選択の理由や社外でのアウトプットの楽しさ、目指す将来像などを聞きました。 

アプリ開発から開発環境改善へ軸足が変化 


――2022年4月にLINE FukuokaからLINEへ転籍したそうですね。それまでのキャリアを教えてください。 

2019年に新卒でLINE Fukuokaへ入社しました。きっかけはLINEやLINE Fukuokaのエンジニアたちが不定期開催する「LINE Developer Meetup」です。大学1年のときに友人に誘われて参加してみたら、大学の講義では扱わないようなリアルな現場の話が新鮮、かつ人との交流も楽しくて、毎回参加するようになりました。 

大学では機械学習を学んでいたのですが、いまいちピンとこなくて。先輩がiOSでアプリをつくっていたので真似てみたらハマりましたね。その後、大学4年の5月にLINE Fukuokaで長期インターンとして働き始めました。 

そのとき感じたのが、純粋に技術が好きなエンジニアが多くて話していて楽しいということ、そしてエンジニアの裁量が大きく自由に開発できる環境だということ。働いている人たちの雰囲気がとてもよかったので入社を決めました。 

入社後はiOSエンジニアとして「LINEスタンプメーカー」(当時のサービス名はLINE Creators Studio)の開発を担当しました。 LINEアバターからスタンプを作成する機能を開発したりや様々なアプリの機能の改善をする傍ら、OSSへのコントリビュートもやっていました。具体的にはXcodeGenをローカルで使うSwiftパッケージにも対応できるようにしたのですが、これは当時、世の多くのエンジニアが待ち望んでいた機能だったのではないかと自負しています。 

その後、Swiftコンパイラにもコントリビュートしたり、LINEのファミリーサービスのアプリのCIマシン改善に取り組んだりするうちに、iOSの開発インフラへの理解が深まり、開発全体をメタな視点で見渡せるように。興味や関心もアプリ単体の開発より開発環境全体の改善へと移っていきましたね。 

2021年にLINEにモバイルエクスペリエンス開発室が立ち上がり、現所属の部署である開発体験向上に注力するDeveloper Experienceチームが発足したのは、ちょうどそんな頃でした。すでにLINE Fukuokaで開発体験の改善に近いようなことにも取り組んでいたので、今のチームの上司から「うちのチームに来ない?」と声をかけてもらったのが、LINEへ転籍したきっかけです。転職ではなく転籍でやりたいことを叶えられたのは、LINEならではだと思います。もちろん部署から一人エンジニアが減るので、組織や周囲の方の負担が増える部分もあったはずですが、メンバーや当時の上司もエンジニア同士としてキャリア選択に理解を示してくれたので、心理的にもスムーズに次の環境に進めました。LINE Fukuokaのみんなとは、今でも変わらないくらいの頻度やテンションで仲良く交流しています。 

――転籍しても福岡に残ることを選ばれたのですね。 

当初は東京への移住も考えていましたが、2021年から「LINE Hybrid Working Style」がスタートしていたので、まずは福岡で働いてみるのもいいかなと思い直して。福岡にいれば同居している家族と関わりもそのままでいられるし、物価も安いし、総合的に福岡のほうがいいかなと。一番の理由は前年の秋に猫のトムくんを飼い始めたことかもしれないですね。以前親は猫を飼うことを反対していたのですが、トムくんに完全に一目ぼれ。転籍後にハル子ちゃんも飼い始めて、今は2匹と暮らしています。 

――そういえば、SNSでもかわいい猫の絵をアップしていますね。 

イラストの猫は自分の化身なんです。ネット上のアバターみたいなもので、小学生の頃から描いています。自分が開発した「LINEスタンプメーカー」で、この猫のイラストのスタンプもつくりました。過去に「iOSDC Japan」というカンファレンスで個人スポンサーになったときも、パンフレットにこの猫のイラストを登場させています。昔から猫が好きなんです。 

2021年のiOSDC Japanのパンフレットに掲載した猫のイラスト 

   
今の働き方はリモートワークの理想形 

――実際に「LINE Hybrid Working Style」を実践してみていかがですか。 

仕事が疲れたり、息詰まったりしたら、いつでも猫を吸える今の環境は最高です(※猫を吸う=猫に顔をうずめて息を吸うこと)。おかげでストレスも減ってエナジードリンクを飲む量が減りました。でも実は私、猫アレルギーなんですけど(笑)。 

――なんと(笑)。でも猫の癒し効果は絶大なんですね。 

そうですね。働き方でいうと、すでにコロナ下でリモートワークをしていたこともあり、それほど大きく変わっていません。今のチームで地方に住んでいるのは私だけですが、何かあるとすぐZoomを開いて話しますし、月に1回は東京にも行くので、コミュニケーションロスや寂しさは感じていません。リモートワークの理想形で働けているんじゃないかなと思っています。 

Zoom越しにトムくんの様子を見せてくれる秋 

異動後は、やりたかった開発環境改善に取り組めています。ユーザーはすぐ近くにいる社内エンジニア。モバイルアプリを開発するエンジニア全員が触るものなので影響範囲が大きく、かつ成果も見えやすいので、やりがいを感じます。 

今、特に力を入れているのはビルドパフォーマンスの向上です。LINEアプリは数百モジュール、コード行数も140万行を超える巨大なプロダクトなので、ビルド時間がネックになりがち。そこで、ビルドキャッシュを効きやすくするために、プロジェクトの構成を整えたり、リモートキャッシュを活用しやすいモジュール化の仕組みを考えたり、トライ&エラーでいろいろ試している真っ只中です。LINEアプリの開発基盤もXcodeGenなので、LINE Fukuoka時代の経験や知識をフルに生かせていますね。 

開発者体験の向上は会社の開発に直結するだけでなく、ときに世界中の困っているエンジニアをサポートすることにもつながります。最近だとXcode14に専門的な問題がいくつかあったのですが、Appleのエンジニアとのやりとりや、OSSの活動で培ったやり取りで、Swiftコンパイラの専門知識を伝えて問題解決に導くことができました。自分のバリューを発揮できたことが実感できて嬉しかったですね。  


「目立ちたい!」がアウトプットの原動力 

――社外のカンファレンスや勉強会にも積極的に参加されていますね。  

本格的にカンファレンスに登壇するきっかけになったのが、インターン終了間際に参加したカンファレンス「try! Swift Tokyo2019」です。このときは『脱リテラル初心者』というタイトルで、Swiftのリテラルがコンパイルされ、どう解釈されていくかを解説しました。登壇後、主催者から「発表内容がおもしろかったので、ニューヨークでも発表しないか」という誘いがあり、二つ返事で引き受け、2019年9月には「try! Swift NYC 2019」に登壇。東京での発表の拡張版として、SwiftのリテラルがSwiftのオブジェクトになるまでにどのようにコンパイルされているかを話しました。  

それ以降、毎年国内外のカンファレンスに登壇しています。2020年はスペイン最大のカンファレンス「NSSpain」にもチャレンジしました。あいにくコロナ禍でオンライン開催でしたが、プロポーザルが通り、無事登壇できました。  

今でこそ、英語でのアウトプットにも積極的ですが、インターン時は英語はほとんど話せない状態でしたね。LINE Fukuokaの技術組織では英語で会話することも多かったので少しずつ話せるようになり、TOEICの点数も300点くらいアップしました。英語を日常的に使う環境にいると自然とそうなりますね。 

勉強会には昔からよく顔を出していて、福岡のローカルコミュニティ「HAKATA.swift」の運営も手伝っていました。みんなで楽しいことをやるのが好きなんですよ。いまはSwiftの勉強会「わいわいswiftc」の運営を手伝っています。

 

――本業も忙しい中、個人で勉強会やカンファレンスでのアウトプットに積極的な理由は? 

一番の原動力は「目立ちたがり屋」だからだと(笑)。学ぶことも好きだし、学んだことを共有するのも好き。私がおもしろそうだと興味を持って、個人的に深堀りする分野って割とニッチなことが多くて。ニッチな分野は難しいと思われがちですが、実はそんなに難しくないよ、と伝えたいですね。 

それから、カンファレンスの登壇や勉強会での発表で目立つと、いろんな人に話しかけてもらえて、つながりや輪がどんどん広がっていく。これが本当に楽しいんです。登壇でネームバリューが生まれると、実力のあるエンジニアと話す機会も増えて、いい刺激をもらえます。もちろん、カンファレンスの登壇は毎回緊張しますし、今後も慣れることはないでしょう。でもその分、練習には時間をかけるし、事前調査もじっくりやるし、できる限りの準備はします。それが結果的に自分のスキルアップにもつながっていますね。 

僕は根っからのお祭り男なので、カンファレンスとか勉強会とか、みんなで楽しく盛り上がれるイベントが好きなんです。LINEのエンジニアって案外シャイな人も多くて、自分から手を上げる人は少ない気がするんですけど、「一緒にやろう!」と声をかけて巻き込めば、一緒に盛り上がってくれる人が多いですね。 

たとえばオンラインイベントを開催すれば、TwitterのハッシュタグやYouTubeのコメント欄で参加してくれるし、登壇を頼めば快く引き受けてくれて、しかもとても楽しそうに話してくれる。そういう様子を見ていると私も嬉しくなります。 

エンジニアが気軽に発信を楽しむ文化を醸成したい 

――社外でも存在感がある秋さんですが、LINEで働き続ける理由は何でしょうか。 

入社時の印象の通り、LINEには純粋に技術が好きなエンジニアが多く、みんなでわいわい議論しながら難しい課題解決にトライするのが本当に楽しいんですよね。いまや社会インフラでもあるLINEは非常に巨大なプロダクト。歴史も長くなってきたので、技術的な課題も増えつつありますが、その分、チャレンジの余地は大きく、エンジニアにとってはこの上なくおもしろい環境だと思います。 

あとは外部でのアウトプットを会社が奨励していて、きちんと評価してくれることも私にとっては大きいですね。年に2回の評価では外部のカンファレンスへの登壇も加味してもらえています。自分がやりたいからやっていることですが、やはり評価されれば嬉しいし、モチベーションにつながります。 

LINEにはDeveloper Successチームという勉強会やコミュニティ活動も積極的にサポートなどをしてくれる組織があって、「イベントをやりたい」と言えば、LINEのイベントとして開催することもできます。実際に私もサイボウズさんとは個人的なTwitterのやりとりをきっかけに、Developer Successの人がそのやり取りを拾ってくれて。その後とんとん拍子に話が進んで、転籍直後の4月に「リモートワークと地方の働き方」というテーマで両社のエンジニアがゆるく話すイベントを実施しました。これも楽しかったです。 

――今後エンジニアとして目指していることはありますか。

まず、アウトプットに関してはこれからも目立つように発信し続けて、みんなが楽しくハッピーになれるようなことを企画していきたいですね。私が楽しみながら発信する姿を見せることが、社内のほかのエンジニアたちが「自分も何かやってみようかな」と思うきっかけになってくれたら本当に嬉しい。エンジニアの個人的なアウトプットをここまで評価してくれる会社もそう多くないと思うので、少しでも何かやってみたいと思う人は臆せず手を上げてみると、思いがけない世界が広がるのではないでしょうか。 

個人的な展望としては、社内異動がしやすい会社なので、サーバーサイドやWebフロントエンドなど、別のジャンルにもチャレンジしていきたいですね。iOS界隈ではそれなりに名前が知られてきたと思いますが、さらにエンジニアとしての幅を広げることで、よりいろいろな人と関われるようになるはず。その先にはさらにおもしろいこと、わくわくすることが待っているんじゃないかなと思っています。 

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