ユーザーの動きを可視化して次の楽曲制作・プロモーションを支える、LINE MUSICのレーベル向け分析ツールの開発秘話 

多くのサービスを生み出し続けるLINEグループにおいて、サービスを継続的・効率的に成長させる“Growth開発” を専門特化して担う開発部隊として、2018年6月に発足したのがLINE Growth Technologyです。サービスの成長過程で生じる多種多様な課題の解決や競争力を高めるための開発に取り組んでいます。 Growth開発の裏側」シリーズでは、LINE Growth Technologyが携わるプロダクト・プロジェクト事例の紹介を通じて、LINEグループにおける”Growth開発”のおもしろさや課題、働く個人としての想いややりがいなどを紹介します。 

初回は、音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」のレーベル向け分析ツールについて、プロジェクトマネージャーの田尻祐也、サーバーサイドエンジニアの山田順輝、フロントエンドエンジニアの西田大地に話を聞きました。 

田尻祐也(画像左上):インターネットのWeb開発や画像検索サービス、歌詞検索サービスの開発やマネジメントに約10年従事した後、2019年7月にLINE Growth Technologyに入社。現在はプロジェクトマネージャーとして開発を牽引している。 

山田順輝(画像中央下):システムインテグレーターおよびWeb開発会社でエンジニアとして働いた後、2020年4月にLINE Growth Technologyに入社し、当初から本プロジェクトにサーバーサイドエンジニアとして関わるほか、進行管理なども担う。 

西田大地(画像右上):2019年3月にLINE Growth Technologyに入社し、ランディングページ制作ツールの開発などに従事。現在はフロントエンドエンジニアとして、本プロジェクトののUI・UXなどを担当している。 

 

参加レーベルに様々な機能や情報を提供する分析ツール 

 ――LINE MUSICのレーベル向け分析ツールとはどういったものなのでしょうか。 

田尻:LINEが提供している音楽ストリーミングサービスであるLINE MUSICでは、現在8,000万曲以上の楽曲が配信されており、これらの楽曲はたくさんのレーベルから提供いただいているものです。そのレーベルの方々はもちろん、その先のアーティストさんたちが、LINE MUSIC上の様々な情報を確認するためのツールです。 

例えば楽曲やアーティストごとの再生回数、お気に入りに登録したユーザー数、再生したユーザーの年代など独自のデモグラフィックデータの一部、ランキングやお気に入りなどアプリ上のどこから楽曲が再生されたのかといった情報があります。これらの情報が確認できることで、レーベル側が配信のタイミングやキャンペーン施策、さらには楽曲制作などのLINE MUSIC内に限らない様々な戦略を検討する際に参考にしていただくことを想定しています。 

開発したLINE MUSICのレーベル向け分析ツール

――分析ツールを開発することになった背景を教えてください。 

西田:以前からレーベル向けのツールは存在していましたが、分析のために十分な情報が提供できていないなど、いくつかの課題がありました。 

以前はレーベルやアルバム、トラック単位での再生回数やフォロワー数のみの提供に留まっていました。一方、他社の音楽配信サービスに比べても正直遅れを取っている状況でした。LINE MUSICとしても、よりアーティストのプロモーションや楽曲制作に活用できるような情報を含んだデータ提供に早急に対応する必要がありました。またレーベル側では直接画面の編集などができないため、LINE MUSIC側の担当者に依頼してから反映されるなど運用面でも大小様々な課題がありました。 

やらなければいけない要件が多く、従来のツールのアップデートでは、すべて満たすことが難しいと判断し、ゼロから新たなツールを開発することになりました。 

 ――開発がスタートしたときは、どのような状況だったのでしょうか。 

田尻:やりたいこと、解決したい課題は明確でしたが、仕様など決まっていないことが大半だったため、ユースケースやWebサイトの構成などについて、プロジェクトのメンバーや関係者と相談しつつイメージを固めるという、最初のベースを作り上げるところがまず大変でしたね。

西田:現在はレーベル向けの機能のほか、サービス提供者であるLINE MUSICの管理者のための機能も備えています。プロジェクト当初の要件はレーベル向けの機能だけでしたが、プロジェクト開始から2ヶ月・リリースの3ヶ月前、画面設計やワイヤーフレームができてきた段階で急遽管理者向け機能も開発することになったため、カツカツの状態でプロジェクトを進めていました。 

 山田:開発ボリュームが相当大きかったため、2020年6月に最初のバージョンをリリースした後も開発を継続し、徐々に機能を強化していきました。大きなリリースですと、2020年11月に再生回数などの統計情報を提供を開始しています。LINE MUSICの大規模なログから効率よく集計する仕組みや、それらのデータをどうやったら使いやすく表示できるかなど、試行錯誤を重ねました。さらに2021年に入ってからランキングページやお知らせのページなどを追加しています。 

ランキングページ

 コンシューマではない、プロが使うツールの開発ならではの苦労 

――開発する上で苦労した点を教えてください。 

西田:もっとも苦労したのは、実際に利用するレーベルの方々に適したUI・UXを考えるところです。当然ですが、私たち自身は音楽や映像データを管理したことはなかったため、このツールをどのように使うのかについて、なかなかイメージできませんでした。 

 たとえば、このツールには楽曲や映像データを確認するためのプレーヤーの機能が組み込まれています。このプレーヤーを使って映像を再生する際、当初は多くのWebサイトのメディアプレーヤーのように、セレクトボックスで映像品質を選択して再生する形にしていました。ただ、色々と話を聞いていくと、レーベルの方は複数の品質の映像を同時に見て確認するということが分かりました。 

 そこでセレクトボックスで品質を選択するのではなく、複数のプレーヤーを画面上に表示し、それぞれで異なる品質で再生できるように改めました。一般のユーザーとは異なるニーズを把握して対応していくところは、独特な機能の開発になるので難しいというか新鮮に感じた部分ですかね。 

田尻:本ツール内には、分析情報をグラフ化して表示するタブがあります。このタブに切り替えたとき、グラフが表示されるまでに数秒間のタイムラグが発生し、その間表示領域には何も表示されないという問題がありました。この挙動はUXよくないため、なるべくストレスなく使ってもらえるUXを追求する工夫をしました。 

 西田:調査したところ、表示領域に何も表示されないのは、グラフのコンポーネントをそのまま表示領域に配置していたことが原因でした。この状態だと同期的に処理されてしまい、すべてのグラフの表示処理が終わるまで、タブの切り替え処理が完了しません。 

  そこで、タブが切り替え終わってからグラフの表示処理を初めて行うように変更しました。グラフのコンポーネントをReactのlazyで動的に読み込み、ReactのSuspenseでグラフのコンポーネントの配置箇所を囲んで読み込みを待機することで、2つの処理が非同期化され、タブ切り替えもグラフの表示処理を待たずに切り替わるようになりました。 

表示処理イメージ 

大規模サービスを支える“やりがい” 

 ――開発に携わっていて、どういったところでやりがいを感じますか。 

田尻:このツールを使うのはレーベルの方々やLINE MUSICの担当者ですが、その先にはLINE MUSICというサービスがあり、200万以上もの多くのユーザーにご利用いただいています。そうしたサービスにかかわることができて、自分が開発したツールを使って楽曲が配信されている、自分の仕事の影響力を感じられる部分にやりがいを感じます。 

 西田:私は触れたことがない技術をゼロから調査し、最終的に機能するものとしてリリースしたときですね。 

今回のプロジェクトで言えば、分析データのグラフを表示する画面において、棒グラフや折れ線グラフといったシンプルなものに加え、都道府県ごとの値を日本地図上に表示するといった機能を開発しました。こういった仕組みの開発は初めてだったので、ゼロから調査して最終的にリリースしたときの達成感は大きかったですし、やりがいを感じることができました。 

 山田:私もそうですね。LINE MUSICの分析ツール開発で使用している技術は、これまで私が経験したことのないものばかりです。たとえば今回、Kotlinを使った開発を行っていますが、私はKotlinにちゃんと触れるのも初めてでした。こういった自分が経験技術にチャレンジして経験を積めることは、エンジニアとしてやりがいを感じることができる部分です。 

またチームでは週1回程度の頻度で勉強会を行っていて、自分が学んだことを発表することができます。このようにインプットとアウトプットができる環境が用意されていることも、新しい技術に意欲的に取り組むモチベーションにつながっていると感じています。 

 田尻:チャレンジし続ける文化を持つチームであることはとても意識しています。お二人が挙げている様に、触れたことのない技術に挑戦するのもそのひとつですね。他にも今回のプロジェクトでは、Kubernetesを取り入れて開発しています。LINE Growth Technology内ではKubernetesの事例は少なかったのですが、チームでメリットデメリットを検討して採用しました。主な採用理由は、簡単に開発環境を作れたり、スケールアウトが容易にできることですね。チームにとって新たな技術であっても、その時々のプロジェクトにふさわしいとメンバー内で判断された場合には、積極的に取り入れています。 

もちろん、チャレンジをするということは、うまくいくことばかりではありません。例えば、今回のプロジェクトは外部の方に利用いただくツールのため、できるだけ速く何度もレビューしながら完成度を高めるべきと考えスクラム開発に取り組んだのですが、初めてのことで苦労がたくさんでした。 

LINEのアジャイルコーチの方にアドバイスをいただいたこともあり、現在はスムーズに開発を進められる様になっています。とはいえ課題が尽きないのも事実ですが、スクラムチームをゼロから立ち上げる楽しさや、課題を解決してより良くすることにもやりがいを感じています。これからも新たなチャレンジはし続けたいと思っていますし、それを楽しんでいきたいですね。 

 

――今回の開発によって、LINE MUSICの事業にどのように貢献できたと考えていますか。 

山田:もっとも大きいのは、ユーザー情報を含んだ分析データをレーベル向けに提供できるようになったことです。こうしたデータは、レーベル側でのマーケティング分析などに役立っているのではないかと考えています。 

LINE MUSICには業界最速のリアルタイムランキングもあり、このランキングに入ることを目標にしているレーベルもあるなど、流行を作る若い世代に強い音楽ストリーミングサービスとして、レーベルやアーティストに認識されています。分析データを活用して良い楽曲や良いプロモーションにつながれば嬉しいですし、よりLINE MUSIC内でも競ってもらえる、もっとLINE MUSICに熱量を持ってもらえることに貢献できると良いですね。より多くのアーティストやレーベルのプロモーション戦略に役立てれば、多くのユーザーにも良い音楽を届けることにもつながるはずなので、ここはやりがいに感じられる部分だと思います。  

 LINE MUSIC側でのメリットとしては、例えばアーティストの画像登録をレーベル側で行えるようになったことで、それに対応する作業が不要になり、作業効率のアップにつながっています。今後もさまざまな機能を拡充し、楽曲を提供していただいているレーベルとLINE MUSICの双方に対してベネフィットを提供していきたいと思います。 

 

 ――最後に、今後に向けた展望を伺わせてください。 

田尻:当初予定した機能は一通り開発が完了していますが、新たに開発すべき機能が次々とリストに積まれている状態であり、これからも開発を続けていきます。 

こうした機能の追加や要望への対応によってツールの完成度を高め、より多くのコンテンツをレーベルの方々に登録してもらえる環境を整えてLINE MUSICのサービス自体を盛り上げていきたいですね 

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